研究課題
糖鎖はタンパク質と比べてゆらぎが大きく、X線やMRIの解析により平均的立体構造を得ることは難しい。従ってこれまでタンパク質の常識は糖鎖では非常識であることが多くあった。その最たる例として、増殖因子(タンパク質)のように直接に受容体を介して細胞内にシグナルを伝えることは、糖鎖にはできないと考えられてきた。ところが最近糖鎖に対する受容体が見つかった。但し、その酵素活性の生物学的意義は不明であった。我々はその糖鎖のリガンドとしてのコア構造を決定し、受容体酵素の基質を含む下流シグナル、そしてそれによる神経軸索再生制御を解明した。この発見は例外的な糖鎖のシグナル経路とは考えにくく、新しいコンセプトが隠されている可能性が高い。本研究の眼目は、多面的アプローチによって、糖鎖シグナル伝達という新コンセプトを樹立することにある。我々は、異なる糖鎖受容体同士のクロストークを見出すことができた。すなわち、受容体型チロシンフォスファターゼPTP sigmaと受容体型チロシンキナーゼALKとの、コータクチンのリン酸化、脱リン酸化を介するクロストークである。さらに、PTP sigmaとALKの共通基質候補分子はコータクチン以外にも複数あることを近接ビオチンラベリングによって見出した。R5年度はこれらの共通基質候補分子群の中でAPBB1の解析と、脳内で果たすALKの機能について解析を進めた。また、軸索再生能についてembryoとadultの対照的な差異を見出し、へパラン硫酸の一つであるグリピカン2が糖鎖スイッチとしての決定的役割を担うことを見出した。加えて、運動学習における糖脂質の重要性を見出した。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
Clin Exp Nephrol.
巻: - ページ: -
10.1007/s10157-024-02464-z.
J Biochem.
巻: 173 ページ: 413-415
10.1093/jb/mvad013.
Exp Neurol.
巻: 366 ページ: 114444.
10.1016/j.expneurol.2023.114444.
Glia.
巻: 71 ページ: 2591-2608
10.1002/glia.24441. Epub 2023 Jul 20.
bioRxiv [Preprint].
巻: - ページ: 573290
10.1101/2023.12.25.573290.
Int J Mol Sci.
巻: 24 ページ: 15571
10.3390/ijms242115571.
Nephrology (Carlton).
巻: 28 ページ: 629-638
10.1111/nep.14227. Epub 2023 Aug 10.
https://igcore.thers.ac.jp