研究実績の概要 |
ヒトIgG抗体にはIgG1, IgG2, IgG3, IgG4のサブクラスが存在するが、IgG4に関しての知見は非常に乏しい。IgG4はFc受容体への結合の弱さ、補体活性欠如、Fabアーム交換による二重特異性の特徴がある。多臓器線維化を示す自己免疫性の「IgG4関連疾患」が発見され、IgG4抗体の病原性が国内外で議論の的になっている。逆に、IgG4が免疫を抑制する可能性が示唆されており、“病原性”および“制御性”抗体としてのIgG4抗体が脚光を浴びてきている。本研究課題では、「ヒトIgG4産生マウス」および「完全ヒト抗体産生マウス」を新規マウスモデルとして、IgG4陽性B細胞の分化・活性化機序と種々の疾患病態におけるIgG4の正負の制御を明らかにすることを到達目標とする。 今年度は、独自に樹立したIgG4産生マウスを用いて、IgG4陽性B細胞の分化誘導をin vitroおよびin vivoで行うことに成功した。免疫後の抗原特異的なIgG4+胚中心B細胞およびプラズマ細胞も検出することが可能となった。LATY136FマウスはIgG4関連疾患類似モデルとして知られるがマウスIgG1がヒトIgG4に対応するとみなしたモデルであった。g1-hIgG4:LATY136FマウスはIgG4陽性プラズマ細胞の増加が見られ、ヒト疾患に近いIgG4関連疾患モデルを樹立できた。また、完全ヒト抗体産生マウスにおけるIgG4陽性B細胞を同定することができた。しかし、人工染色体に挿入されたGFPが非常に強くフローサイトメトリー解析において他の蛍光に干渉するため、限られた蛍光色素しか使えないという問題に直面した。そこで、完全ヒト抗体産生マウスのGFPを欠損したラインを新たに作出した。さらに、オリジナルはICR背景であったため、より疾患モデル解析に向くC57BL6へとバッククロスを行った。
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