研究課題/領域番号 |
21K18260
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
佐藤 荘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (60619716)
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研究分担者 |
國吉 佳奈子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト助教 (70747881)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 疾患特異的マクロファージ / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
初年度はマクロファージの病態関与が推測される病態であるがんに着目して研究を行った。申請者らはHydrodynamic injection(HDI)法を用いて肝臓に発がん遺伝子であるRasの発現及びがん抑制遺伝子p53の発現抑制をかけて発がんさせる肝臓がんモデルを立ち上げており、HDI実施後に経時的に肝臓の組織学的解析を行い、病態の進行度を検定した。このモデルの経時的なサンプリングの際に当初予期していなかったトラブルが起こったものの、迅速に解決した。また、HDI法に加え、コリン欠乏高脂肪メチオニン原料飼料(CDA-HFD)を用いた飼育による肝臓がんモデル等の複数の発がんモデルを用いて試験を実施することにより、HDI発がんモデルとの病態進行度の比較を行い、更にこれらの二つのモデルでマクロファージ・単球のサブタイプの比較検討を行った。また今年度は、FACS解析に併せて、遺伝発現レベルでのより詳細な細胞集団のサブタイプのクラスタリングを実施するために、病態サンプルからMac1+細胞をcell sortorによって回収し、それらをRhapsodyを用いたシングルセル解析を実施し、肝臓がん発症下で変化するマクロファージ・単球のサブタイプを詳細に捉えた。担がん状態の病態の進行により正常時、未病時や発症時を比較し、FACS解析及びシングルセル解析の結果の中で共通した変化が確認された細胞集団に関しては、各細胞を別々にcell sortorによって回収し、野生型マウスにHDI法を実施して担がん状態を作製したマウスに移植し、腫瘍体積を測定することにより各サブタイプががんの増悪・抑制の機能を所持しているかをin vivoにて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画はおおむね順調に進展していると判断している。 当初予期していない事として以下の事が挙げられる。HDI法による担がんモデルであるが、尾静脈から一定圧及び一定時間で注射を行わないと正確に発がんしない点、また尾静脈投与後に外観からは病態の進行度が分からないため、解析するタイムポイントの設定が著しくしづらい点があり、予想以上に統一性のあるデータの回収に時間がかかった。しかし、正確なマウスの固定具の入手や手技の習熟度が上がったために、モデルを実施する回が異なっていても、正確に同じ病態を作製することが出来るようになった。 このHDI法が完全に確立された後、当初の予定通りにHDI実施後に経時的に肝臓の組織学的解析を行い、病態の進行度を検定し、各タイムポイントでのマクロファージ・単球の各差プタイプの変化を取り入れたデータの入手に成功した。またCDA-HFDを用いた長期飼育により発がんするモデルを作製しており、このモデルでのがんの病態の進行度にともなったマクロファージ・単球の各差プタイプの変化を取り入れたデータの入手に成功した。さらに詳細に遺伝子発現レベルでも分類をするために、シングルセル解析を実施した。シングルセル解析の際には、マクロファージ・単球に特化して変化をみつけるために、Mac1+細胞にゲートをかけ、cell sorterを用いてサンプル作製後に解析を実施した。解析の結果、FACSによる分類結果と大まかな細胞分類は合致するものの、新たに出現した細胞集団も存在していたために、現在これらをFACSにて同定するための抗体のスクリーニングを同時に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施したHDI法とは異なるがんモデルを実施した際にHDI実施時とは異なる免疫細胞が出現したため、それらの細胞の病態への寄与度を検討する。
初年度の上記計画でがんの病態に影響を及ぼすことが確認された細胞が同定された場合、このマクロファージサブタイプのRNAシークエンス(RNA-seq)もしくはClariomTMD解析を行い、申請者がこれまで蓄積してきた様々なマクロファージの遺伝子発現データとこの細胞の遺伝子発現データとを比較し、この細胞の特徴を捉える。これまで確立した遺伝子抽出方法のノウハウを用いて、これらの遺伝子発現情報を解析し複数の疾患関連遺伝子を選出する。それらの候補遺伝子について、shRNAのシステムを用いて、候補遺伝子を断続的にノックダウン(KD)した骨髄細胞を樹立し、それらを予め半致死量のγ線を照射した野生型のマウスに移植してキメラマウスを作製し、HDI担がんモデルを供して肝臓がんに及ぼす影響とマクロファージサブタイプを中心とした免疫応答を検討する。このスクリーニングにおいて疾患に関与することが予測された分子に関しては、CrispR/Cas9のシステムで安価で迅速にKOマウスを作製し、HDIによる担がんモデル、CDA-HFDを用いた飼育による肝臓がんモデル等を用いて疾患との関連性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、報告書内に記載した通り、研究に使用するモデルの経時的サンプリング法の正確な樹立に時間がかかったため。
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