研究課題/領域番号 |
21K18262
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
東山 繁樹 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (60202272)
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研究分担者 |
小川 敦司 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (30442940)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | K-Ras変異 / がん治療 / DNAアプタマー / タンパク質分解 / ユビキチンリガーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、疾患特異的変異タンパク質を任意に標的・分解する共通技術プラットホームを提案・創出し、その有用性と汎用性を示し、実用化を目指す。まず、膵がん、肺がんや大腸がんで高頻度に認められるK-Ras G12変異体3種(K-RasG12D/V/C)を対象事例として、K-RasG12D/V/Cを特異的に分解するCUL3型ユビキチンE3リガーゼ(CUL3 UbE3)の基質指向性変換モジュレーターはSPOPとK-RasG12D/V/Cにそれぞれ特異的に結合するリガンドを創出した後、各リガンドを架橋することで作製する。このリガンド架橋基質指向性変換モジュレーターを目的のがん細胞に導入し、細胞増殖増殖阻止を試みる。 本年度は、昨年度までに取得したK-Ras特異的DNAアプタマー「C-A2」の塩基配列を基に2次構造予測を行い、がん治療薬候補として昨年度に特許公開されたG12D結合DNAアプタマー「NBK2-TG」との構造比較より重要と推定される「C-A2」の特定領域へランダム変異を導入したランダムmC-A2 DNAライブラリーを作成し、K-RasG12DおよびK-RasWTをベイトにしてSELEXを施行し、K-RasG12D特異性の向上を試みた。しかし、残念ながらK-RasG12D特異的DNAアプタマーを濃縮するには至らなかった。 一方、既に取得済みのSPOP結合低分子化合物#533とK-Ras標的DNAアプタマーC-A2を化学架橋し、K-RasG12Dを有する肺がん細胞株 SK-LU-1への導入を試み、K-Rasタンパク質レベルの変動解析、並びに細胞増殖特性の解析を行った。その結果、K-Rasタンパク質の減少と、有意な細胞増殖抑制を観察することができた。今後、さらに、K-RasG12D特異的DNAアプタマーの取得を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度までに取得したK-Ras特異的DNAアプタマー「C-A2」の塩基配列を基に2次構造予測を行い、がん治療薬候補として昨年度に特許公開されたG12D結合DNAアプタマー「NBK2-TG」との構造比較より重要と推定される「C-A2」の特定領域へランダム変異を導入したランダムmC-A2 DNAライブラリーを作成し、K-RasG12DおよびK-RasWTをベイトにしてSELEXを施行し、K-RasG12D特異性の向上を試みた。しかし、残念ながらK-RasG12D特異的DNAアプタマーを濃縮するには至らなかった。この点において、今後さらに検討を重ねる必要がある。 一方、既に取得済みのSPOP結合低分子化合物#533とK-Ras標的DNAアプタマーC-A2を化学架橋し、K-RasG12Dを有する肺がん細胞株 SK-LU-1への導入を試み、K-Rasタンパク質レベルの変動解析、並びに細胞増殖特性の解析を行った。その結果、K-Rasタンパク質の減少と、有意な細胞増殖抑制を観察することができた。このことは、本研究の有用性が示されたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
既に取得済みの「C-A2」K-Ras DNAアプタマーとK-RasG12D DNAアプタマー「NBK2-TG」の両者と、K-RasG12DおよびK-RasWTタンパク質との結合シュミレーションをAIにより試みることで、「C-A2」を基盤とした改変の有効性を検証・判定する。また、「NBK2-TG」の2次構造予測を基にしたランダム変異導入ライブラリーを作成し、新たなK-RasG12D特異的DNAアプタマーの取得を継続して試みる。また、SPOPリンカー化合物として#533の代わりに#144, #1991を採用し、その有用性の検証も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度切り替え時期の研究をスムースの行うため、一部繰越金とした。
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