研究課題/領域番号 |
21K18265
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和多 和宏 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70451408)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | 発声学習行動 / 鳴禽類ソングバード / 大脳基底核 / 時系列制御 / 発話障害 / 動物モデル |
研究実績の概要 |
本研究目的として、発声学習時の大脳基底核ループ経路の機能異常にあるとする『大脳基底核ループ機能異常』仮説を検証することを目的にしている。これを踏まえ、以下の2点に関して研究を進めた。 (1)本研究でフォーカスする大脳基底核歌神経核(Area X)を構成する全細胞タイプの同定及び、その構成比を検証した。この際、Area Xの主要構成細胞であるmedium spiny neuron(MSN)のサブタイプを明らかにするために、特にドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン受容体のサブユニット別分類を実施した。これにより、今後の機能阻害操作を行う対象選別の基礎情報として用いる。また、各細胞タイプ・MSNサブタイプに特異的発現を示す遺伝子群を同定できたため、ATAC-seq実験によりこれらの遺伝子群の発現調節領域を明らかにし、それをArea X内の各細胞タイプ特異的遺伝子操作実験に用いる。 (2)本研究ではアデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus: AAV)による遺伝子改変操作による基底核ループ機能阻害を計画している。当該年度では、CRISPR-saCas9システムによる遺伝子ノックダウンの可能性を検討した。しかし、当研究室で樹立したzebra finch由来繊維芽細胞でのゲノム改変効率に対して、AAV感染による脳内神経細胞における効率は想定していたよりも低く(< 1%)、遺伝子ノックアウト実験として個体レベルの行動解析を実施するのには不向きである結果を得た。これに代わる方法として、通常発現プロモーターによって駆動できるmiR30バックボーンにしたshRNAi法を導入した。その結果、脳内においても、これまでにテストした対象遺伝子群すべてにおいて、発現量の60~85%を低下させる非常に安定した遺伝子ノックダウン法を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルスによる研究活動の制限を受ける期間が生じたが、本研究でフォーカスする大脳基底核歌神経核の一細胞レベルの遺伝子発現解析を当初の予定通り実施することができた。その結果、ドーパミンやアセチルコリン受容体をはじめ様々な神経修飾物質受容体のサブタイプレベルでの細胞タイプごとの網羅的な発現情報を取得できた。また、アデノ随伴ウイルス(AAV)によるソングバード大脳基底核歌神経核での遺伝子ノックダウン実験手法を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いたソングバード大脳基底核歌神経核での遺伝子改変実験を施行していくことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:2021年度にコロナ禍による研究活動の制限があったこと、また共同研究先での研究、また参加予定であった学会がすべてオンライン開催になったため。 アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いたソングバード大脳基底核歌神経核での遺伝子改変実験を施行するために必要な物品を即急に購入予定、また2022年度開催予定の国際学会(3つを予定)に参加時の旅費として支出する。
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