研究課題/領域番号 |
21K18278
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
富田 浩史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40302088)
|
研究分担者 |
菅野 江里子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70375210)
尾崎 拓 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70621069)
田端 希多子 岩手大学, 理工学部, 特任准教授 (80714576)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
|
キーワード | 網膜変性 / 遺伝子治療 / チャネルロドプシン / 神経栄養因子 |
研究実績の概要 |
本研究課題で使用するswitChは、mVChR1の改変型であり、幅広い可視光に応答しチャネルが開く特性はそのままに、より短い波長(紫)で閉じることが特徴である。このような特性を持つチャネルロドプシンはステップ関数型オプシン(SFO)と呼ばれ、SFOはパーキンソン病治療への応用研究が近年発表されている。しかしながら、脳への応用の場合、光を導入するために光ファイバーを脳内に留置する必要があるため、遺伝子導入とともに光ファイバーなどの医療機器の開発も必要である。一方、眼は常に光にさらされており、特に我々が開発したswitChは幅広い可視光に応答できることから眼での利用が最適と考えられる。 本研究では、網膜のグリア細胞であるミューラー細胞が脱分極により神経栄養因子の発現を誘導することに着目し、switCh遺伝子をミュラー細胞に発現させることで、光で神経栄養因子の産生を促し網膜変性を抑制できるかを検証することを目的とした。 研究計画に基づき、初年度はswitCh遺伝子を恒常的に発現するミューラー細胞株の樹立およびミューラー細胞に特異的に発現を誘導するアデノ随伴ウイルスベクターを構築するとともに、switCh発現Tgラットの組織評価を行った。 switCh-ミューラー細胞株に対し光照射を行い、各種神経栄養因子群の遺伝子発現変化をリアルタイムPCRにより調べたところ、神経節細胞や視細胞の変性に保護効果を持つことが知られているある特定の栄養因子の発現が光照射により10倍以上に高まることが判明した。また、switCh-Tgラットの網膜電図のa波、b波の振幅は正常ラットと同様で、恒常的なswitCh遺伝子の発現は網膜機能に何ら影響を与えないことが判明した。 今後、軸索切断モデルを用いて、switChの効果を検証する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度予定した研究計画の光障害による視細胞変性に対する効果については解析が遅れているものの、すでに、次年度に挙げた研究計画の一部に着手しており、全体として概ね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
ミューラー細胞において恒常的にswitCh遺伝子を発現するTgラット(switCh-Tg)の作製を終えており、今後はswitCh-Tgラットを用いて幅広い網膜変性疾患に対する効果を検証する予定である。網膜変性モデルとして、初年度に実施した光障害による視細胞変性モデルや軸索変性モデルが挙げられる。 また、将来の遺伝子治療の可能性を検証するためには遺伝子導入用ベクターが必要である。初年度に構築したGFAPプロモーターによりswitCh遺伝子の発現を誘導するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、正常ラットのミューラー細胞への遺伝子導入を行う。当研究室では、様々な血清型のAAVを保有しており、動物実験により最もミューラー細胞に導入効率の高い血清型を決定する。 Tgラットを用いた研究において、保護効果が認められた場合はswitCh遺伝子の発現と保護効果との関連を明らかにするために、栄養因子発現量や変性に関わる細胞死経路等をウエスタンブロッティングや免疫組織化学的手法を用いて調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究で使用予定の機器のリースが遅れ、リース代金を支払わなかったため使用額に差異が生まれた。現在、リースを始めており、今年度、支払いが生じる。
|