ナノ粒子のゴム状ナノコンポジットをマトリックスとして形成することにより,架橋せずにリサイクルできるゴム状ネットワークポリマーを創製することを目的として研究を行った。令和5年度は,ナノ粒子のゴム状ナノコンポジットをマトリックスとするネットワークポリマーを作製し,混練機を用いて30 rpmで構造を破壊してから金型に充填し,加熱プレスにより成形した。ナノマトリックスに存在するナノ粒子の直径が10 nm以下の場合,ナノ構造は完全に破壊され,ナノ粒子は天然ゴム中に均一分散した。一方,ナノ粒子の直径が50 nm以上の場合,ナノ海島構造は残存することが確認された。とりわけ,ナノ粒子としてポリスチレンを用いた場合,成形加工できることが示唆された。 研究期間全体を通じて,天然ゴムおよびポリイソプレンを用いて,ビニルモノマーをグラフト共重合することにより調製した有機系ナノ粒子,ナノダイヤモンドおよびシリカナノ粒子等の無機系ナノ粒子,アルブミン等の生物系ナノ粒子を用いてナノ粒子のゴム状ナノコンポジットをマトリックスとするネットワークポリマーを創製した。ナノ粒子間距離を制御する方法として有機系ナノ粒子およびシリカナノ粒子をハイブリッドすることによりナノ海島構造を形成した場合,破断応力の値は約24 MPaになった。有機系ナノ粒子またはシリカナノ粒子だけを用いてナノ海島構造を形成した場合,破断応力の値は約10 ~18 MPaであったことから,ナノ海島構造を形成するために有機系ナノ粒子とシリカナノ粒子をハイブリッドすることにより示された24 MPaという破断応力の値は画期的な成果であるといえる。ポリスチレンナノ粒子(サイズが50 nm以上)のゴム状ナノコンポジットをマトリックスとするネットワークポリマーは,混練した後,加熱プレスすることによりリサイクルできることが示唆された。
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