研究課題/領域番号 |
21K18317
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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研究分担者 |
河野 芳海 静岡大学, 工学部, 准教授 (50334959)
渡部 綾 静岡大学, 工学部, 准教授 (80548884)
小林 正樹 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (90312678)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | CO2削減 / メタネーション / ドライ改質 / 固体炭素捕集 / CO2資源化 / 構造体触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は、温室効果ガスであるCO2を含んだ工業排ガスを触媒変換プロセスによって処理し、資源となるCH4や合成ガスの製造、そして合成ガスから固体炭素を連続的に捕集するCCU型触媒プロセスを構築するものである。COP21パリ協定で我国が宣言した、CO2排出量の削減目標に貢献する触媒プロセスの開拓が目的である。今年度の研究推進で以下の成果を得た。 1.産業プロセスから排出されるCO2の室温域(25℃程度)作動と大多量処理を図るメタン化反応場を構造体触媒システムで確立することに成功した。その要因として、排ガス中に含まれる数%のO2共存が大きく影響していることを明らかにした。 2.メタン化反応場に設置する構造体触媒の構造様式の変化が、CO2処理能力に及ぼす影響を調査した。その結果、スパイラル形がハニカム形やプレート形よりも優れていることを明らかにした。 3.2について、物質・熱移動の観点から調査した結果、スパイラル形構造体触媒では原料ガスのスワール流れの発生が触媒活性の促進と関係することが推察された。そして、スパイラル形のひねり角度(ツイスト比)が大きいほどスワール流れ効果が大きく、活性が向上することがわかった。 4.高速条件下でも炭素析出耐性の高いドライ改質用触媒として、無電解ニッケルめっきで調製したスパイラル形構造体触媒の創製に成功した。この触媒の原料ガスの処理時間は約0.3秒であり、工業レベルの触媒有効係数0.1以下の速いガス処理を可能にすることを明らかにした。 5.ドライ改質後の合成ガスから固体炭素を大量に捕集することに成功した。そして、捕集触媒の成分として鉄酸化物系構造体触媒が活性と経済性から適していることを明らかにした。また鉄酸化物系触媒による捕集温度の最適化を検討し、500℃以下(特に470℃)での捕集操作が多量に固体炭素を捕集させることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ドライ改質後の合成ガスから固体炭素を効率的に捕集する触媒システムがラボレベルで構築でき、良好な機能性を示した。また、固体炭素の捕集用触媒の探索において鉄系酸化物触媒が目標値以上の炭素捕集率を示した。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度に整備したラボレベルのメタン化装置とドライ改質装置を連結した反応システムを確立させ、以下の項目について研究推進を図る。 1.メタン化反応における使用H2量の削減を目的に、H2/CO2比の変化がメタン化活性に及ぼす影響を調査する。その際、反応温度や原料ガスの分圧変化、O2共存の影響についても検討する。 2.1で得られるメタン化反応後の組成データをもとに、それを模擬した原料ガスによるドライ改質特性を評価する。改質温度の変化や合成ガスの組成変化に焦点をあて、CO不均化反応の進行性を加速する条件を検討する。 3.1と2の結果をもとに、メタン化反応システムとドライ改質システムを連結した反応装置を用い、CO2からCH4合成、CO2+CH4から合成ガス製造についてそれぞれの反応特性を評価する。 4.3の実施で判明した合成ガス組成を模擬した原料ガスを用い、固体炭素の捕集実験を行なう。捕集触媒は鉄系酸化物触媒を用い、炭素の捕集率や捕集した炭素の状態観察、そして捕集温度の最適化などを検討項目として実施する。 5.1~4の結果をもとに、メタン化システムとドライ改質システム、そして固体炭素捕集システムの三つを連結した反応システムを構築する。そして、その動作特性を確認しつつ、ガス状CO2の炭素成分を固体として捕集する一連の反応システムについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた研究実施計画よりも先に進んだ研究成果が得られた。そのため、購入する消耗品や装置部品などを見直し、研究目的の達成をより確実にするための研究用品を次年度に購入することとした。
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