研究実績の概要 |
挑戦的萌芽研究「黒とその倫理の研究--ラトゥールからBLMまで」の資金を取得してから半年ということで、まずは「黒」に関する基礎文献を購入して、読み込んでいく作業を徹底した。多数の文献に目を通したが、ジュリア・クリステヴァ『黒い太陽: 抑鬱とメランコリー』(Julia Kristeva, Soreil Noir, Depression et Melancolie, Editions Gallimard, 1987)とジョン・ハーヴェイ『黒の文化史』(John Harvery, The Story of Black, REACTIONS BOOKS LTD PUBLISHERS, 2013)は学ぶ点が多かった。この半年は主に、黒色とメランコリー(黒胆汁)との関係を深めることに費やした。 また新型コロナウィルスの影響で出張が難しい日々が続いたが、2022年3月に、大阪中之島美術館への見学を行った。遠藤克彦により設計されたこの美術館は真っ黒な外観をしており、黒の研究で欠かすことのできない建築である。その報告を「中之島美術館――愛される黒のゆくえ」(水声社コメット通信第20号、2022年3月31日、15-16頁)で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は黒とメランコリー、また中之島美術館と現代の黒について研究を進めたが、2022年度は黒人差別の歴史と黒について研究を進めたい。Denise Murrell, Posing Modernity: The Black Model from Manet and Matisse to Today, New Haven and London: Yale University Press, 2018を皮切りに、研究を進めて、2023年度末の単著の出版に備えたい。ただし本年度予定していたアメリカへの調査旅行は、昨今の国際情勢を鑑みて、見合わせる可能性があるので、代替えの調査方法などを模索していきたい。
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