研究課題/領域番号 |
21K18330
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
加藤 有希子 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (20609151)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 黒 / 色盲 / 黒白色覚 / アド・ラインハート / 毒 |
研究実績の概要 |
初年度は黒の研究として、黒人美術や黒人差別の歴史、さらに黒い抽象画をトレードマークにするアド・ラインハートらの資料を集めたが、読解し、研究する段には至らなかった。というのも、2022年度から2023年度は『点描の美術史』という学術書の刊行が水声社で進んでいたため、執筆はもっぱらそちらのほうに時間を取られてしまった。しかしその合間に、『黒でも白でもないものは』(水声社、2023)という小説執筆を行い、白黒色覚の方が受ける被差別者としての暮らし方や、色覚と生命力との関係などを、SFという手法を使い、思考実験する試みをした。これは挑戦的萌芽研究にある意味ではふさわしく、創作物という独自の成果を生み出すことができた。 またこの『黒でも白でもないものは』は人間の性淘汰がもたらす「悪」「悪感情」「争い」にも注目しており、そうしたものがない黒白色覚の世界というものを仮想的に想定し、2018年度から2022年度まで京都大学こころの未来研究センターで続けてきた「現代社会における<毒>の重要性」の研究の成果を引きついだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記にも述べたように、『点描の美術史』(2023年度刊行予定)という別の業務が入ったため、黒の研究にかけるエフォートが減ってしまった。しかし資料は着実に集めており、『点描の美術史』の執筆が終わるおおむね秋ごろから、アド・ラインハートなどの黒い絵画についての論文を少なくとも1本、2023年度中に書く予定である。また科研費の延長を希望しており、2024年度に黒の研究を単著か共著にまとめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
上述したが、2023年度も多くの時間を『点描の美術史』の執筆に費やすため、2023年度は予算を抑え、2024年度まで黒の研究費を延長使用する予定である。そこで遅れていた分の成果を、できれば単著として出していきたい。水声社などから、好意的な返事をすでにいただいている。
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