| 研究課題/領域番号 |
21K18333
|
|---|
| 研究機関 | 金沢大学 |
|---|
研究代表者 |
森 雅秀 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90230078)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
| キーワード | 御室版 / 曼荼羅 / 仁和寺 / 版木 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本課題は京都の御室仁和寺の塔頭寺院である皆明寺において、明治初年に開版・刊行された御室版両部曼荼羅の白描図に関する多角的・総合的な研究である。初年度にあたる令和3年度は、明治3年に摺られた初版本の国内の保存状況の確認と、その現地調査を中心に研究を進めた。具体的には京都大学文学部と東京大学大学院美術史研究室に初版本が所蔵されていることが確認でき、それぞれについての実地調査をおこなった。調査内容は、各ページの摺りの状態の記録と、現在刊行されいてる出版物との比較が中心である。東京大学本に関しては、所蔵機関の協力の下、すべてのページの写真撮影も実現した。これの結果、初版本の出版形態がほぼ解明され、現在刊行されている初版本の出版物には含まれない情報が多数含まれていることが明らかとなった。また、それぞれの版本の入手の経緯についても、調査を進めた。
これらの初版本の調査とは別に、これまで出版の記録が残されていなかった御室版両部曼荼羅の版本を、市中の古書店において発見し、入手した。御室版の出版史の中での位置づけの解明や、他の版との比較研究を現在進めている。
御室版の版木を所蔵する仁和寺とは、研究期間全体の工程について検討を進めている。また具体的な調査内容について協議を行い、令和4年度からの本格的な版木の調査の準備作業を進めている。
御室版と同系統の両界曼荼羅である高野山のいわゆる血曼荼羅について、高野山霊宝館で調査を実施した。とくに近年制作された復元本について、復元にあたって参考にした図像資料の詳細について、情報収集を行った。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、御室版両部曼荼羅の総合的研究の初期段階として、初版本の所在とそれぞれの詳細な調査を行った。また、当初は知られていなかった版本の出現とその調査が実現し、御室版の出版状況についての、より詳細な研究が可能となった。令和4年度以降の版木の調査についても、仁和寺と協議を進め、スムーズな調査の実施が見込まれる。
|
| 今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、仁和寺において版木の現状についての悉皆調査を開始する。版木へのナンバリング、寸法の採取、写真撮影、3Dスキャナーによるスキャニング、現状の記述、文字情報の翻刻等を行う予定である。また、御室版の開版にあたって経済的な支援を行った寺院の現地調査、御室版のもととなった神護寺の高雄曼荼羅や、同じ請来本系の高野山の血曼荼羅や当時の甲本、元禄本などとの比較を行う。さらに、御室版の制作にあたった絵師による仏教図像の粉本について、京都市立芸術大学所蔵の作品の調査を行い、御室版との関係について検討を進める。
|
