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2022 年度 実施状況報告書

我々の情報環境に求められる「意思決定しやすい情報提示法」-多属性意思決定を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 21K18339
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

岡田 光弘  慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (30224025)

研究分担者 井出野 尚  東京理科大学, 経営学部経営学科, 教授 (40805628)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード意思決定 / 多属性意思決定 / グラフィック表現・推論 / 深層学習と多属性意思決定 / 情報提示デザイン / アイトラッカー / 論理と意思決定 / 情報社会と公平性
研究実績の概要

多属性意思決定に関して種々の研究を進めた。特に。決定方略の計算機シミュレーション、情報モニタリング法被験者実験、深層学習を組み合わせた研究を行った。実験者が指定した決定方略で商品を選択する課題について、計算機シミュレーションと実験から得られた情報探索データに基づき、深層学習を用いて八つの決定方略の分類を行った。深層学習で訓練したモデルを、情報モニタリング法実験の座標系列データに適用した。指定された方略と分類された方略の一致率は、40.18%であった。加算型・加算差型のような補償型の方略は、方略の探索方法を教示されたとしても実際にその通りに探索することができないことが示唆された。また、分離型のような非補償型の方略を指定されても、実験の参加者はより多くの情報を探索しようと試みていた可能性も示唆された。二つの決定方略を組み合わせる2段階決定方略も分類する分析も検討する必要がある。機械学習の公平性の視点から、どの典型方略にも属さない学習データも導入することを試みた。
他の主要成果としては、(Ideno et al., 2020:Diagram)の再分析を行い、また、コンピュータシミュレーションの結果との対比を今回の研究では加えた。分析の結果から、グラフィック2値表現の方が数値表現よりも選択の時間が速くなされることなどから、属性値の表現が選択の容易さに影響を与えること、そして、選択肢と属性の行列の配置によって(縦軸と横軸の役割の入れ替えなどによって)選択時間・注視パターンが変化することから、表の表現が意思決定プロセスに影響を与えることが再確認された。深層学習を用いたシミュレーションの結果と実験結果との対比から、本実験被験者の意思決定方略の特徴を分析した。
情報の公平性の重要性について、深層学習の文脈で検討した。特に2つの情報セキュリティ日仏会議において成果を公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

多属性意思決定に関する本研究グループの独自の新しい知見を確認できた。深層学習による多属性意思決定方略の推定という新しい研究の方向を開いた。伝統的情報モニタリング法、アイトラッカー法、シミュレーション法、深層学習モデルを統合して、新たな多属性意思決定研究方を開発できた。

今後の研究の推進方策

多属性表デザインと意思決定方略との関係についての特徴をさらに明確にする目的で、純粋な(意思決定的でない)認知課題に対するアイトラッカーデータを収集する。これにより表デザインの変化が意思決定プロセスにどのような変化をもたらすかが、これまで以上に解明されることが期待できる。
属性値をマトリクス表のマスの色分けで示すことにより意思決定がしやすくなるという結果を得た。この我々の先行研究をより現実的な多属性意思決定に応用する目的で、(数値と色を組み合わせた属性値表現による)ハイライト付き多属性表の有用性を意思決定の立場から検証する。
本年度新たに、深層学習の手法を多属性意思決定研究に導入したが、この研究をさらに進める。特に方法論的基礎を吟味する。論理推論などの認知課題への適用可能性についても検討する。
本年度は特に、新しい情報環境における公平性や説明可能性の視点を、深層学習による意思決定推定や判断推定の公正性などの問題も検討していく。上記のシミュレーション法で生成したデータセットを用いて深層学習による意思決定方略推定器を構築することのなかにも公平性や説明可能性を検討する材料を具体的に見出せる。また、我々が行っている、意思決定しやすい多属性表のデザイン研究は、同時に意図的・操作的バイアスを与える表デザインについての新たな知見も提供している。このことは、公平な情報提示の問題にも直接結びついている。これらも含めて、情報提示環境における公平性・説明可能性の問題をさらに研究していく。

次年度使用額が生じた理由

海外渡航や密閉実験キャビン内での被験者実験の一部は2022年度前半まで新型コロナウイルス感染状況の環境下では実施できず、遠隔方式などを取り入れて研究を進めた。次年度以降は感染の影響が少ないと考えられたことから、国際研究協力のための渡航の一部や、密閉実験キャビン内でのアイトラッカー対面実験が行える予定である。このために次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] INRIA(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      INRIA
  • [雑誌論文] The Relationship Between Fear of Isolation and Thinking Ability about Social Issues 1.2022

    • 著者名/発表者名
      Hayashi, M., Ideno, T., & Takemura, K.
    • 雑誌名

      Japanese Psychological Research.

      巻: 1 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1111/jpr.12433

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 眼球運動測定を用いた多属性意思決定過程の検討2022

    • 著者名/発表者名
      井出野尚・玉利祐樹・森井真広・竹村和久・岡田光弘
    • 学会等名
      日本行動計量学会第50回大会
  • [学会発表] 深層学習による意思決定方略の同定2022

    • 著者名/発表者名
      玉利祐樹・井出野尚・川杉桂太・村上始・森井真広・竹村和久・岡田光弘
    • 学会等名
      消費者行動研究学会
  • [学会発表] 多属性意思決定過程における行動データと意思決定態度の関連2022

    • 著者名/発表者名
      森井真広・井出野尚・玉利祐樹・竹村和久・岡田光弘
    • 学会等名
      消費者行動研究学会
  • [学会発表] 多属性意思決定における情報処理過程の検討--シミュレーション、情報モニタリング法、眼球運動の比較から2022

    • 著者名/発表者名
      玉利祐樹・井出野尚・竹村和久
    • 学会等名
      日本行動計量学会第50回大会
  • [学会発表] 時間知覚とエントロピーの関係の検討2022

    • 著者名/発表者名
      玉利祐樹・石部志歩・井出野尚
    • 学会等名
      日本心理学会第86回大会
  • [学会発表] 状況が不明確な言明に対する判断傾向の検討--出現頻度が高いと想定される言明を用いて2022

    • 著者名/発表者名
      井出野尚・林幹也・玉利祐樹・竹村和久
    • 学会等名
      日本心理学会第86回大会
  • [学会発表] 社会場面における謝罪対象に関する検討2022

    • 著者名/発表者名
      井出野尚・林幹也・玉利祐樹
    • 学会等名
      日本社会心理学会第63回大会
  • [学会発表] 論理と論理言語の関係を再考する2022

    • 著者名/発表者名
      岡田光弘
    • 学会等名
      日本哲学会
  • [学会発表] 論理推論の形式について2022

    • 著者名/発表者名
      岡田光弘
    • 学会等名
      早稲田大学哲学会シンポジウム
  • [学会発表] Disagreement in logic2022

    • 著者名/発表者名
      岡田光弘
    • 学会等名
      Logic for Peace
  • [学会発表] Fairness in AI, Introductory Remark2022

    • 著者名/発表者名
      岡田光弘
    • 学会等名
      7th Frabce-Japan Cybersecurity Workshop
  • [図書] Wittgenstein's Stlraggle with Intuitionism, in ittgenstein's Philosophy in 19292023

    • 著者名/発表者名
      Mathieu Marion and Mitsuhiro Okada
    • 総ページ数
      215
    • 出版者
      Routledge
    • ISBN
      978-1-032-28853-6
  • [学会・シンポジウム開催] 8th France-Japan Cybersecurity Workshop2022

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公開日: 2023-12-25  

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