研究課題/領域番号 |
21K18344
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
CHEN DOMINIQUE 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (50801784)
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研究分担者 |
ソン ヨンア 法政大学, デザイン工学部, 准教授 (20831423)
城 一裕 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (80558122)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | speculative ethics / more-than-human / ACI / 発酵 / 微生物 |
研究実績の概要 |
本研究は,近年,特に欧米を中心として活発になっている脱人間中心主義の議論のなかで扱われる「モアザンヒューマン」,つまり人間以外の自然存在を「人間以上の存在」と捉え,人間と自然の対称性を回復するために用いられる概念を,アジア各地の発酵食品産業における自然観,宗教的価値観,そして文化背景と接続した上で,情報技術の設計に応用するフレームを確立することを目的とする. そのための方法として,初年度より日本,韓国,台湾といった諸地域において発酵食品の生産や農業,その他の関連する文化活動に携わる人々のもとで現地調査を行い,東アジア地域に共通もしくは相違するモアザンヒューマン概念の発達を探る計画を立てていた. しかしながら,2021年度は新型コロナウィルスのパンデミックが一向に収束せず,日本から海外への渡航および日本国内の県をまたいだ移動も厳しい状況が続いたことから,当初の研究計画通りに進めることが難しかった.そのため,チーム内で定期的に研究のリサーチとディスカッションを重ね,その中で国内外の文献の渉猟と技術動向の調査を行った.関連して,代表者は米国の発酵食の専門家であるSandor Ellix Katz氏の著書『メタファーとしての発酵』(ISBN-13:978-4873119632)の監訳を務め,2021年9月15にオライリー・ジャパン社より刊行された.本書では物理現象としてではなく,人の生き方や哲学を考える上での比喩として発酵を捉えるという思想が説かれており,本研究課題の目的とも親和性が高いものである.本書の刊行後には,複数の一般参加型パブリックイベントにおいて本研究課題の問題意識に関する講義を行い,ディスカッションを重ねたことで,今年度の活動への示唆を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先述した通り,新型コロナウィルスのパンデミックの影響により,本研究課題の前提であった日本から海外への渡航および日本国内の県をまたいだ移動が行えなかったため,当初の研究計画通りには進められなかった. 他方で,本研究課題の起点となった研究課題(21H03768:自然存在との相互ケア的な関係性を築くコミュニケーションデザインの提案と実践的評価)の中で実施した諸活動(前年度に投稿し採択されたACM CHI'21のLate Breaking Work論文の発表,21_21 DESIGN SIGHT「トランスレーションズ展」での展示(2020年10月から2021年6月まで)における来場者アンケートの収集,そして日本科学未来館での展示(2022年4月より2023年4月まで)の準備)を通して,本研究課題にとっても有益な知見を蓄積することができた.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度5月現在時点で,日本から韓国までの渡航制限が緩和されたため,8月から9月にかけてソウル,光州,釜山を訪問し,各地の発酵食や農業の専門家にインタビューを実施することを予定している.その他にも,日本国内の移動も制限緩和されているので,各地を訪れ,同様に専門家のインタビューを検討している.同時に,各専門家が日常的に接している発酵食や自然存在の生物学的データを採集する携帯型プローブ(センサー電子回路系)を実装し,人間へのインタビューと並行して,各菌株とそれぞれの生態環境の生物学的特徴を収集し,データベースの構築を開始する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度において,新型コロナウィルスのパンデミックの影響で海外および国内の移動が厳しく制限されたため. 2022年度においては,規制緩和が生じているため,研究計画の遂行が行える見込みである.
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