研究課題/領域番号 |
21K18362
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
曾根 洋明 宮城大学, 基盤教育群, 教授 (60713550)
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研究分担者 |
フェラン ティモシー・ジョン 宮城大学, 基盤教育群, 教授 (10533276) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 日本語母語話者 / フィンランド語母語話者 / チェコ語母語話者 / 定冠詞 / 弱定名詞句 / 定性 / 特定性 |
研究実績の概要 |
本研究では, theの運用に長けた無冠詞言語母語話者に対する調査等から,日本で教えられている,theを使用するための「定」性感を補正しtheのトレーニング法を開発する。
[1] 弱定NP(単数:唯一に同定が出来ない名詞句。複数: theが示す属性を持つモノ全ては指さない名詞句)等を含む多種の名詞句に関して,適切な冠詞の使用法を問う問題を日本語母語話者(L1Jp語話者),フィンランド語母語話者(L1Fi語話者),チェコ語母語話者(L1Cz語話者)に課し考究した。L1Fi語話者とL1Cz語話者は弱定NP問題,特に複数弱定NP問題の得点が高かった。これは,両言語自身の定冠詞の発達により醸成された弱定NP感覚が英語に転移したことが要因として考えられた。一方,日本語における定冠詞の発達,ひいてはL1Jp語話者のtheに対する感覚の醸成には相当な時間がかかると思われる。よって,弱定NPを含む定NPの感覚を教育によって補っていくことが必要である。ところで,複数弱定NPのように,theがついた名詞句は必ずしもtheが示す属性を持つモノ全てを指すとは限らない。しかし,中学,高校の教師は約60%が複数名詞句にtheがつくとtheが示す属性を持つモノ全てを指すと誤った認識を持っていた。このため,現在,まず複数弱定NPの特性を解析し教育現場に情報を提供しようと考えている。
[2] L1Jp語話者である多くの学生,ひいては中学,高校の先生が,theの概念を話し手と聞き手の共通理解に基づく「定性」ではなく,「特定性」と捉えていることが判明した。また,L1Jp語話者への調査において,話し手,聞き手どちらにも「特定」でないモノでも,それは「特定」なモノであるとした回答者が約半数いた。これらの結果は他のデータと合わせて解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,フィンランドおよびチェコにおいて調査を予定していたが,新型コロナウィルス感染拡大により,両国の回答者は調査会社を介して集めた。これにより,高い層から低い層まで全ての英語運用能力レベルをカバーすることができるようになり,より的確な考察ができるようになった。日本では,各人の英語運用能力レベルを示す指標にTOEICの得点を使用したが,フィンランド,チェコでは一般的でないのでCEFRを自己申告させた。また,本研究はL1Jp語話者向けの教育法開発のため,日本人学生および教育者の調査も行った。成果の一部は2022年度大学英語教育学会国際大会で発表した。また2023年度の同大会でも追報を行う。
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今後の研究の推進方策 |
フィンランド語母語話者の定性感覚に関してはフィンランド協定校の英語教員との意見交換を計画している。また,KOTUS(フィンランド国内諸言語研究所)の研究成果やアドバイスも利用する予定である。更に,日英二言語母語話者だからこそ感じることができるであろう,日本人が理解する英語の「定」性と英語母語話者が持つ「定」性感覚の違いを数名の日英二言語母語話者とのインタビューにより解き明かしていく試みを計画している。日本の教育現場に提案する予定の複数弱定NPの概念研究も推し進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により予定していた学会等がオンライン開催となった。また予定していたフィンランド,チェコでの調査・知見交換の機会も奪われてしまった。同様な理由で日英二言語母語話者に対するインタビューも遂行できなかった。このため,支出の執行遅延などが生じた。令和5年度に延期して実施予定のフィンランド協定校の研究者との意見交換,更にはKOTUS(フィンランド国内諸言語研究所)からの情報取得,日英二言語母語話者に対するインタビューなどの研究項目にかかる費用として活用する予定である。
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