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2022 年度 実施状況報告書

砕屑性ジルコンによる土器製作地の精密解析:古代物流解析ツールとしての可能性の検証

研究課題

研究課題/領域番号 21K18381
研究機関九州大学

研究代表者

中野 伸彦  九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20452790)

研究分担者 田尻 義了  九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (50457420)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード土器 / ジルコン / U-Pb年代
研究実績の概要

令和4年度は,筑紫地区遺跡群周辺の現地調査を実施した.調査目的は,①土器の原料となる粘土の起源物質となる遺跡周辺の岩石の採取および,②弥生土器作成時に粘土に混和する砂利(混和材)の採取である.①に関してはキャンパスを含む旧遺跡群内では,開発が進み露頭を見出すことができなかったが,遺跡群近くの牛頸川に露出する花コウ岩を採取した.②に関しては,砂利の採取地として可能性の高い牛頸川河原より土器中に認められる混和材とほぼ同じ粒度の川砂を採取した.
本年度の調査により採取した花コウ岩および川砂各1点,昨年度採取した弥生土器1点,丹塗り弥生土器1点,須恵器1点,遺跡群周辺の風化土壌/粘土質土壌3点からジルコン分離を行い,昨年度分離した弥生土器1点を合わせて計9資料/試料からジルコンを得た.
弥生土器,風化土壌/粘土質土壌,花コウ岩のジルコンはいずれも粗粒であり,自形性が強いが,須恵器中のジルコンは細粒であり,自形性が強い粒子は少ない.また,弥生土器に関しては,200gの資料から1000粒程度のジルコンを得られたのに対し,須恵器ではその含有量が約150粒子と少なかった.さらに,風化土壌/粘土質土壌には多量のジルコンが含まれていたが,川砂約3kgからは約20粒子のジルコンしか分離することができなかった.これらの多様な資料/試料についてジルコン分離結果から,土器中のジルコンは混和材を起源とするものではなく,粘土を起源とする可能性が極めて高いと判断できる.
得られた全ジルコンに対して,カソードルミネッセンス像による内部組織を観察し,予察的な年代測定を実施した.予察的な年代測定結果から,丹塗りを併せた全ての弥生土器のジルコンの年代は,9千5百万年前から9千万年前に集中し,この年代集中は風化土壌/粘土質土壌のものとほぼ一致することが明らかとなった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

丹塗り弥生土器1点を含めた弥生土器3点,須恵器1点,それらの胎土の原料と考えられる風化土壌/粘土質土壌3点,粘土の起源と考えられる花コウ岩1点,混和材の起源と考えられる川砂1点からジルコンを分離し,ジルコンの起源が粘土由来であると明らかとなったため.また,来年度の分析につながる予察的なデータを得られたため.

今後の研究の推進方策

予察的な年代測定結果から,丹塗りを併せた全ての弥生土器のジルコンの年代は,9千5百万年前から9千万年前に集中し,この年代集中は風化土壌/粘土質土壌のものとほぼ一致することが明らかとなった.一方で,花コウ岩は約1億年前から9千5百万年前の年代,須恵器のジルコンは206Pb-238U年代と207Pb-235年代が一致しないディスコーダントな年代をしめし,弥生土器とはジルコンの起源が異なる可能性をしめした.これらの予察的なデータは,全ての資料/試料から得られた年代が,約1億5百万年前から9千万年前の非常に幅の狭い範囲に集中することをしめしている.昨年度の予察的データ取得は,レーザー径25ミクロンで採取したものである.今後の分析では,35ミクロン系を使用することで誤差を最小限にし,試料ごとの僅かな年代の違いを検出する.
本年度は,丹塗り弥生土器1点を含めた弥生土器3点,須恵器1点,それらの胎土の原料と考えられる風化土壌/粘土質土壌3点,粘土の起源と考えられる花コウ岩1点,混和材の起源と考えられる川砂1点の合計9点全ての年代測定を実施,必要であれば現地調査と試料採取,追加分析を実施し,得られた全てのデータから砕屑性ジルコンによる土器製作地の精密解析法の有用性を議論するとともに,筑紫地区遺跡群の解析結果について考察する予定である.

次年度使用額が生じた理由

令和4度調達予定であったエキシマレーザーガスが,ロシアのウクライナ侵攻に伴って入手困難となり令和5年度の調達となった.また,ガスの価格も約40万円から250万円に高騰し,大幅な予算計画の見直しを行う必要があったため.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Contrasting geological background based on the geochemistry of the mafic metamorphic rocks in central Dronning Maud Land2023

    • 著者名/発表者名
      Baba, S., Owada, M., Hokada, T., Adachi, T., Nakano, N.
    • 雑誌名

      Geological Magazine

      巻: 160 ページ: 993-1009

    • DOI

      10.1017/S0016756823000092

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 古墳時代前期の積石塚古墳における墳丘石材採取の具体的様相 -考古学と地球科学の学際融合研究の一例-2022

    • 著者名/発表者名
      梶原慎司・小山内康人・中野伸彦・足立達朗
    • 雑誌名

      考古学研究

      巻: 69 ページ: 54-78

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Formation of corundum in direct contact with quartz and biotite in clockwise P-T trajectory from the Sor Rondane Mountains, East Antarctica2022

    • 著者名/発表者名
      Hokada, T., Adachi, T., Osanai, Y., Nakano, N., Baba, S., Toyoshima, T.
    • 雑誌名

      Journal of Mineralogical and Petrological Sciences

      巻: 226 ページ: -

    • DOI

      10.2465/jmps.220317

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Petrology and zircon U-Pb geochronology of pelitic gneisses and granitoids from the Dai Loc Complex in the Truong Son Belt, Vietnam: Implication for the Silurian magmatic-metamorphic event2022

    • 著者名/発表者名
      Vuong, B.T.S., Osanai, Y., Nakano, N., Kitano, I., Adachi, T., Tuan, A.T., Binh, P.
    • 雑誌名

      Journal of Asian Earth Sciences

      巻: 226 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.jseaes.2021.105070

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 東南極リュツォ・ホルム湾西部,ベルナバネの地質と変成作用2022

    • 著者名/発表者名
      中野伸彦・馬場壮太郎・加々島慎一
    • 学会等名
      日本地質学会第129年学術大会
  • [学会発表] 東南極リュツォ・ホルム湾西部およびプリンスオラフ海岸東部に分布する高 温変成岩類:2021-2022地質調査報告2022

    • 著者名/発表者名
      馬場壮太郎・加々島慎一・中野伸彦
    • 学会等名
      日本地質学会第129年学術大会
  • [学会発表] 九州黒瀬川構造帯・超高温変ハンレイ岩類の変成作 用と変成年代2022

    • 著者名/発表者名
      小山内康人・中野伸彦・北野一平・大和田正明・Vuong, B.T.S.・Dolzodmaa, B.
    • 学会等名
      日本鉱物科学会2022年年会

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公開日: 2023-12-25  

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