研究課題/領域番号 |
21K18384
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
西山 伸一 中部大学, 人文学部, 教授 (50392551)
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研究分担者 |
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 文化遺産保護 / クルディスタン / 考古遺跡 / データベース / リモートセンシング |
研究実績の概要 |
この研究は、近年紛争や開発などで急速に破壊がすすむ西アジア(中東)地域の文化遺産についてどのように記録をとり、それらをどのように保存することができるのか、考古学と地理情報科学の方法論を融合・応用して、新たな手法を生み出すことが目的である。西アジアでは、イラク、シリア、レバノン、アフガニスタンなどの戦乱に巻き込まれた地域で文化遺産の破壊が顕著である。中にはシリア、アフガニスタンのように現地への渡航すらままならない状態である厳しい現状がある。このような中で、近年急速に発展する地理情報科学の技術、特にリモートセンシング関連の技術を活用し、新たな文化遺産の管理・保護のためのシステム構築を目指す。 2021年度は、海外渡航による文化遺産のデータの取得を計画していたが、コロナ禍により現地調査を断念した。しかしイラク・クルディスタンの現地研究者との入念なオンラインによる意見交換により、現地よりひとまずパイロット的な研究を進める一連の考古遺跡データを取得することができた。このデータは、まだデジタル化されておらず、現地の研究者も使用が制限されている状況である。また、国内の研究者との情報交換から現地の研究者が「使いやすい」システムの構築にむけて足がかりを作ることができた。今後は、取得したデータをもとに、パイロット的なデータべースを作成し、現地の文化遺産の管理・保護につながるシステム構築を目指して研究をすすめたい。さらに海外渡航が可能になった時点で、現地におけるさらなるデータの収集ならびにシステム計画の改善にむけて現地研究者との議論を加速させる計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、コロナ禍により海外渡航ができなかったものの、オンラインによるミーティングを開催し、まずは研究の取りかかりとなるイラク共和国クルディスタン地域の文化遺産に関するデータを取得することができた。現地の研究者は、諸外国の調査団により作成されたこのデータを有効活用できておらず、現地でもほとんど活用されることがないということである。データを見る限り、これまで未登録の考古遺跡も含まれており、これらのデータが現地の文化財局や研究者に活用されないのは残念であり、西アジア全体の文化遺産の保護にむけても不幸なことである。 そのためこれらのデータを有効活用するためには、まずはデータベースを作成し、それを空間情報と結び付け、現地の人々にとって活用しやすいようにするのが理想である。国内の海外文化遺産にかかわる研究者との意見交換により、まずは既成のデータベースソフトにより、簡便なパイロット・バージョンを作成するのがよいという結論に達した。今後、現地研究者によって管理維持されてゆくことを考えると「簡便な」というのは重要なファクターであり、現地との十分な意思疎通、情報交換を経て、次の段階に研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後については現地より取得したデータを吟味しながらパイロット的なデータベースとして構築してゆくことを当面の目標としたい。取得したデータはシート毎に文化遺産としての遺跡の情報が掲載されているもので、検索なども困難な状況である。また遺跡の空間情報についても緯度経度が記されているが、GISなどのデータベースに変換する必要がある。写真データも不足している。さまざまな不足があるデータではあるが、これさえも現地ではほとんど活用できていないという現状がある。現地のデータが、現地では活用できていないう不可思議な状況について、ぜひともこの研究で貢献してゆきたいと考えている。 まずはパイロット的なデータベースを構築し、これを「たたき台」として、現地の研究者と意見交換しつつ、さらなる良いものへと発展させてゆきたい。そのためには、現地へ渡航し、より最新の地理情報科学に関するデータを取得するだけでなく、現地研究者とのオンラインによらない対面でのやり取りが重要だと感じている。現地への渡航が可能となるようさまざまな努力を積み重ねてゆくと同時に、現地との緊密なやり取りを継続してゆきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により海外渡航の計画を断念したため次年度使用額が生じた。次年度は状況を慎重に考慮しつつ、現地に渡航することで、研修者との意見交換をすすめるとともに、文化遺産データの取得を行う予定である。渡航先は、イラク・クルディスタン地域を中心に、その周辺地域も視野に入れたい。
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