研究課題/領域番号 |
21K18390
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
国武 貞克 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 主任研究員 (50511721)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 初期後期旧石器時代 / 大型石刃 / 小石刃 / 尖頭形剥片 / ユーラシア大陸 / ホモサピエンス / 発掘調査 / 年代測定 |
研究実績の概要 |
2022年度は、長野県香坂山遺跡の2021年の発掘調査成果を徹底的に分析して、出土状態の図面類を作成し、石器の器種と組成に関する属性表を作成して、発掘調査報告書を作成し刊行した。これにより香坂山遺跡の中心となる成果について公表することが出来た。また石刃製作跡の出土資料については、接合資料を作成してその技術を詳細に分析した。これについては継続中である。香坂山遺跡の位置付けについて評価するための資料提示が出来るようになったため、本研究課題のテーマである列島への新人到来研究の革新についての見通しを、明治大学の黒耀石研究センターのシンポジウム「検証サピエンス日本列島への道」において発表した。また、中央アジアで申請者が発掘調査と分析を行ってきた初期後期旧石器時代の石刃石器群と比較し、共通する点についてまとめて、国内誌に論文を投稿した。 これに加えて、香坂山遺跡の理化学的な分析を進めた。2020年と2021年に実施した発掘調査で採取した土壌試料からOSL年代測定分析を実施した。さらに炭化物集中から木炭を選んで放射性炭素年代測定分析を実施した。両者は整合的な結果が得られた。 さらに2021年の発掘調査の土壌試料から火山灰分析を行い、34~35 ka cal BPの八ヶ岳第Ⅳ軽石の降灰層準について有力なデータを得た。また同じく2021年に検出した礫群について残存脂質分析も実施した。これらの科学分析結果は2023年度に報告書として刊行する予定である。これらに加えて、2020年と2021年の発掘調査において撮影した各調査区の内外の写真から3次元モデルを作成するためのデータの調整などを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は長野県香坂山遺跡の発掘調査成果をまとめて刊行することを目標としていた。また、各種の年代測定分析を実施し、絶対年代についてある程度見通しを得ることも目標としていた。これらについて達成することができたため、計画通り順調進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、長野県香坂山遺跡について2021年の発掘調査の科学分析についての報告書を刊行する。そして香坂山遺跡の調査成果に基づき、中央アジアから北アジアを経由したサピエンス北回り拡散の文化の流れが日本列島にどのように到達したのかについて、見通しを得て論文を作成し、国内査読誌に投稿する。また当初、付加的な目標としていた香坂山遺跡以外に同様の後期旧石器時代初頭の石刃石器群を新しく発見する目的で、別の原産地遺跡の発掘調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症により野外調査が予定通り実施できなかったため。 次年度に現地調査等で使用する予定である。
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