研究課題
昨年度に引き続き,イベント堆積物の特徴化と帯磁率異方性による古流向解析のため,福島県猪苗代湖の湖底堆積物に見られる2011年東北地方太平洋沖地震時のタービダイトと,湖外から流入した磐梯山1888年噴火に由来するハイパーピクナイトを含む,柱状試料の定方位採取を実施した。今年度の採取地点は,猪苗代湖の水深70 m以深の10地点とし,湖底堆積物の極表層30 cmから50 cm部分を採取した。とくに昨年度,底質により採取が困難であった地点で重点的に採取を試みた。今年度は,採泥器の錘の部分にアルミ製の大型の羽根を取り付ける加工を行った。また,これまでと同様に採泥器に小型のコンパスロガーを装着した。ロガーは,深度・3軸傾斜・方位の連続データを記録するため,湖底に採泥器が着地した際の水深・方位・姿勢のデータを得ることができる。ロガー記録によると,着底前の自由落下時に,採泥器は回転せずに一定の姿勢を保ったまま着底した。よって羽根の装着により,落下中の採泥器の姿勢が安定することが明らかとなった。また,採泥姿勢の安定化が,昨年度まで採泥が困難であった地点における,採取の成功につながったものと考えられる。昨年度の試料とあわせて,採取した柱状試料を半割し記載を行い,2011年地震タービダイトと1888年噴火に由来するハイパーピクナイトを確認した。また,これらの柱状試料について,イベント層とそれ以外のバックグランド堆積物(湖底粘土)から,1 ccキューブと7 ccキューブを用いて帯磁率異方性測定用の分取を行い,全ての試料の帯磁率異方性を測定した。一部の地点のイベント堆積物とバックグランド堆積物について,マイクロXRFによって得られた連続化学組成データを検討した。これらの成果の一部は,国内の学会で報告した。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Geological Society, London, Special Publications
巻: 520 ページ: 393~416
10.1144/sp520-2022-171