本研究は、一級水系の源流から河口までを対象に、河道の縦断形・平面形態と流域の地形や地質、降水量、植生、人工構造物の分布との関係を、GISを用いた空間解析や現地調査にもとづいて検討し、河道形態の特徴や流下方向への変化、それらを規定する要因を総体的に議論する。 今年度は、縦断方向の連結性に影響を与える人為的構造物(橋、鉄道、ダム、堰、送電線など)の分布を調査した。その結果、河川横断構造物のうち最も多いものは、橋(道路含む)で7376、次いで堰2626となった。構造物総数は約13000で、河川中心線の長さ(以下、流路長)の総計約11614 kmを考慮すると、1 km当り1.12となった。河川間を比較するため、構造物数/流路長を考えたところ、流路長140 km程度までは流路長当たりの構造物数は減少傾向にあった。北海道や東北地方を流れる河川は1 km当たりの構造物数が1以下となっているものが多い。一方、鶴見川や菊川、大和川、本明川といった流路長が短い河川においては1 km当たりの構造物数が3を超えていた。 研究期間全体を通して、河川中心線と国内全域で整備済の10mDEMとを重ね合わせることで、従来よりも詳細な河川縦断形の作成が可能になった。また、作成した縦断形について、とくに、下流部に注目したところ、多くの河川において勾配の急変(遷緩点)がみられ、その標高は10 mあるいは5 m付近に集中していることがわかった。河床堆積物データと河川縦断形との関係をいくつかの河川について検討した結果、勾配の急減が生じている河川では、遷緩点付近で代表粒径の急減が認められた。勾配の急変がみられる標高を考慮すると、勾配や粒径の急減は海進にともなうバックウォータエフェクトを反映している可能性がある。また、本課題の遂行により、河川下に分布する沖積層との関係、河床と河岸との連結性についても新たな課題が見えてきた。
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