研究課題/領域番号 |
21K18406
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
岡橋 秀典 奈良大学, 文学部, 教授 (00150540)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 森林政策 / 森林管理システム / 地籍問題 / 林業 / 森林信託 |
研究実績の概要 |
2000年代に入って日本の森林政策には明治以来の大変革と言って良いほどの大波が到来している。林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を図るため、新たな森林経営管理制度の下、森林環境税の資金を投入して「新たな森林管理システム」を構築しようとしている。 しかし、この政策には対象となる山林の地籍が未整備であるという大きな陥穽が存在する。ここで言う地籍とは、人における戸籍と同様、一筆ごとの土地について、所有者、位置、境界、面積などの基本的な重要情報を示したものである。特に、位置、境界、面積を地図上で確定することが重要となるが、日本では、登記所の公図は、明治期の地租改正に伴い作られた図面に依拠するものが少なくなく、境界、面積が不正確なものが多い。この問題をどう乗り越えるかは、この政策の成否に大きく関わるであろう。 それゆえ、本研究はこの山林の地籍問題に学術的な観点から挑戦し、その実情を明らかにするとともに、日本の森林政策に貢献することを目指す。本研究では、①地籍調査の進捗プロセスと要因の解明、②地籍調査の進捗率と他の地域要素との関連の検討、③地籍調査状況を踏まえた森林管理モデルの構築、以上3つを課題に掲げた。 2021年度は①と②について調査研究を進めた。①については、地籍調査の大手受託企業を対象に聞き取り調査を行い、地籍調査の進捗プロセスと、その進捗規定要因について情報収集を行った。調査を実施する企業サイドから地籍調査の進捗を規定する要因の考察を行なった。②については、国土交通省から市町村別の地籍調査進捗率のデータを入手しその分析を行った。進捗率の規定要因に関係すると思われる変数を選択し、それらのデータの収集および入力作業を行なった。2022年度は、これら①と②の分析を本格的に進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、地籍調査の進捗率の高い県を取り上げ、県庁での聞き取り調査と文献資料収集を行い、逆に進捗率の低い県については、例外的に高い進捗率を示す市町村を選んで、それらの促進要因を検討するとしていたが、新型コロナ感染症の流行のため、県庁や市町村役場の訪問調査が不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
国土交通省から地籍調査進捗率のデータを入手できたので、他の関連する多くの変数を入力し、統計学的分析を本格的に実施する。昨年度不可能であった都道府県庁や市町村役場の訪問調査が可能になりつつあるので、こちらも遅れを取り戻すようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた都道府県庁や市町村役場への訪問調査が、新型コロナ感染症のため全面的不可能となったため、旅費の執行が不可能となった。2022年度は、新型コロナ感染症の流行が収まりつつあるので、なるべく早期に出張を実施する。
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