研究課題/領域番号 |
21K18415
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
西 平等 関西大学, 法学部, 教授 (60323656)
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研究分担者 |
西 真如 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (10444473)
五十嵐 元道 関西大学, 政策創造学部, 准教授 (20706759)
濱本 正太郎 京都大学, 法学研究科, 教授 (50324900)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | グローバルヘルス / 国際法 / グローバル法 / 世界保健機関 / COVID-19 / 国際保健協力 / 健康 / 社会医学 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルス感染症が蔓延する中で、できる限り速やかに研究成果を公表することに努めたこともあって、総論的研究・各論的研究のいずれにおいても大きな進展があった。 本研究の中心的な課題、すなわち、「私的アクターをその規制対象に含むだけでなく、国家・国際組織のほか、NGO・民間財団・企業など多様な担い手によって定立され、実現される規範群」としてのグローバルヘルス法を体系的に把握するための理論枠組みの探索という課題については大きな進展があり、西平等『グローバル・ヘルス法:理念と歴史』(名古屋大学出版会、2022年、343頁)を公刊した。本書では、グローバル・ヘルス法を、「ヘルスという規範的理念を、現にある世界において実現することを目的とする制度」として定義し、そこにおいて中核をなす「ヘルス」の理念をめぐる理論的な対抗を基軸として、国境を越えた保健協力に関する規範群を歴史動態的な体系において把握しうることを示した。 各論的研究としては、濵本正太郎を編集責任者とする『国際法外交雑誌』「COVID-19」特集号(120巻1・2合併号)が公刊され、この感染症への対応に関わる多様な問題について、国際法・国際私法・国際政治学の観点から検討している。 さらに、この萌芽的研究から得られた知見をさらに一般化することを見据え、西平等が企画責任者となって『法律時報』(2022年4月号)誌上において「グローバル法VS国際法」と題する特集を組み、グローバル法の理論的可能性を追究した。この特集の一部として、西は、「企画趣旨」のほか、「国際法史におけるグローバル法理論の可能性」を執筆している。なお、この特集に結実する研究を遂行するにあたっては、2021年8月から2022年4月にかけて8回の研究会を開催し、10名の執筆者による報告と、それに関する討論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主要な課題である、グローバル・ヘルスに関わる規範群の体系的把握のための理論的な枠組みについて、西平等『グローバル・ヘルス法:理念と歴史』(名古屋大学出版会、2022年)を公刊したことに加え、各論的研究としても『国際法外交雑誌』「COVID-19」特集号(120巻1・2合併号)を公表し、当初予定したよりも早いスケジュールで研究成果をまとめることができた。また、本研究によって得られた知見と理論的成果を、より広いグローバル法研究へとつなげていくための準備作業として、『法律時報』「グローバル法VS国際法」特集(2022年4月号)を編集・出版できたことも大きな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
文書資料の探索を通じた理論的研究は、初年度において、想定していた以上に進展し、グローバル・ヘルス法を語るための、私たちなりの体系を示すことができた。今年度は、この成果を基盤として、国際法研究者や他の分野の研究者との間で積極的に研究交流を行い、その批判を受けてより精度の高い体系の構築に努めたい。また、グローバル・ヘルス法の研究において獲得された方法論を、他のグローバル法分野に拡張する可能性についても検討する予定である。 新型コロナウィルス感染症が必ずしも沈静化していない現下の状況において、当初予定していた通りの海外渡航が困難である場合には、国内における調査や、オンライン方式による研究会に切り替える可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた書籍の納品が遅れたため、4万円程度の繰り越しが発生した。
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