本研究では,政治活動における透明性・公正性,より具体的には公的な資金に対する健全で公平な適正使用を担保することを目的に,将来的なシステム化への一助となるような知見を獲得するため統計学や機械学習などの人工知能技術を活用した分析を行った.対象としては各都道府県議会における政務活動費とし,都道府県および議員単位での支出パターンを中心とした分析を行っている.結果として,都道府県および議員の支出パターンはある程度グループ化することができ,特徴的な支出について抽出できる可能性が示さた. 開始初年度である2021年度は,今回の研究対象データである政務活動費について都道府県レベルにおける制度設計,情報公開の状況等の基礎調査,および政務活動費の収支報告書を対象とした年度単位のデータ整備を行った.政務活動費は地方自治法により定められているものの,その詳細については地方自治体ごとに条例で制定されているためさまざまな差異があり,特にその情報公開の状況においては都道府県ごとに大きな開きがあった.また公開されているデータであっても分析できるようには整備されてはいない問題があり,この対処のためのデータ整備の設計を中心に行った. 2022年度は,データの整備をさらに推し進め,一部の都道府県における全議員の1件ごとの支出について時系列にまとめた詳細データを整備した.年度単位データおよびこの詳細のデータに対して,クラスタリング等のさまざまな手法を用いた分析を行い,特徴的な支出パターンをもつ都道府県および議員の抽出の検討を行った. 2023年度は,対象データの拡充とさらなる分析を行った.具体的には,年度単位データについては全都道府県の各議員まで広げ,支出1件ごとの詳細データについても公文書公開請求を行い,紙から電子化,前処理を行った上で整備し,これらの対して分析を行うことで,議員における支出について特徴を抽出した.
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