研究課題/領域番号 |
21K18430
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松島 法明 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (80334879)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | プラットフォーム市場 / 市場全体を獲得する競争 / 新規参入 / 補完財 |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画に従って関連する研究の整理を中心に行った。特に注目したのはPrat and Valletti (in press, American Economic Journal: Microeconomics)である。広告市場を視野に入れた論文であり、有力プラットフォーム企業の一部は広告市場が主たる収益源であることから、本課題の参考になると判断した。Prat and Vallettiは、新規参入企業が市場参入する際にプラットフォーム企業の広告枠を買って消費者に広告を伝える必要がある状況で、現存企業が広告枠を買い占めて参入阻止する可能性を議論している。 本課題では、消費者の目を獲得する主体としてプラットフォーム企業が能動的に活動する理論を構築する必要があると考えた。これは、彼らの分析において、広告仲介プラットフォーム企業は実質的には受け身の存在であることと対照的である。 そこで、検索連動型広告事業者(現在有力なプラットフォーム企業)と事業形態が異なる事業者(例えばコード決済事業者)が消費者の注目を集める競争を行い、集めた消費者に対して企業広告や企業が提供する各種特典を伝達することで広告収入などを得る状況を検討することにした。コード決済はスマートフォンのアプリを利用するので、当初計画で想定していた有力事業者のプラットフォームを利用した市場参入を捉えたことになる。コード決済事業者は直接広告連動型広告を行っていないが、参加企業に消費者との接点(消費者の注目)を提供するという意味では競合関係にあり、企業の代理で提供できる役務として決済や販売促進を行える。広告事業者と決済事業者は経営様式が異なっており、異なる経営様式を有する事業者の競争を分析する意味でも新規性がある。今後、この競争環境を捉えた分析枠組みを構築して分析を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は関連研究の整理に注力することを計画して、その通りに実行したという意味では計画通りだが、具体性のある分析枠組み構築に至っていないため、計画よりも遅れていると評価した。ただ、現実に即した具体性のある状況を想定して、分析で考慮する各経済主体ができることや、そこでの相互依存関係について明快にできたことは好材料である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた通り、検索連動型広告事業者(現在有力なプラットフォーム企業)と事業形態が異なる事業者(コード決済事業者)が消費者の注目を集める競争を行い、集めた消費者に対して企業広告や企業が提供する各種特典を伝達することで広告収入などを得る状況を検討する。広告事業者と決済事業者の収益源を特定して、それらの相互依存関係を設定できれば具体性のある理論構築を行えると考えている。7月までには具体性のある理論を構築して分析を行って分析結果を確認して、適宜理論の修正や拡張を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は調査費や研究補助に研究費を費やす予定だったが、研究補助を依頼する時間を十分に確保できなかったことから、当初予定よりも支出が少なくなった。
|