継続案件であるプラットフォーム事業者が個人情報を用いた価格戦略を実行する競争については、既にLu and Matsushima (2023)としているが、これは国際学術誌からの改訂要求に従って再投稿する段階にある。加えて、この設定に制作会社の存在も考慮した上で分析を行った。Lu and Matsushima (2023)と差別化するため、単一企業からのみ購入する場合に絞って分析した。消費者に個別条件を提示できる場合、制作会社を優遇して消費者の余剰を吸い上げる傾向が強いことを示した。これをLu et al. (2024)として国際学術誌に投稿した。 企業がデータを活用した事業を行っている中で、消費者にデータ利活用の決定権を与える規制がEUで導入されている。これを踏まえ、まずは独占の状況でデータ利活用権の影響を分析した。その結果、広告収入に代表されるデータ利用による収益が小さい場合や消費者によるデータ提供に対する企業側からの対価が大きくない場合、データ利用規制が消費者厚生や企業利潤を改善する傾向にあることを明らかにした。これをChoe et al. (2023)として国際学術誌に投稿した。 この設定を複占市場に拡張する試みをしている。うち1つでは、データ利活用企業(以下、データ企業)と市場支配力を有する既存企業による競争を設定し、データ企業がデータ利用の対価を内生化できる状況に拡張した。規制によってデータ企業の市場占有率が極めて高くなる可能性を示した。これは、規制によってデータ利用に忌避感を有する消費者群と有さない消費者群を巡る競争で企業間の棲み分けが難しくなることで競争が促進されることに加えて、データ利用の収益が大きい場合には規制によってデータ企業がデータ提供への対価を高めることを通じてデータ収集の量を増やし、それにより需要も奪うからである。この成果を今後論文にまとめる。
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