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2023 年度 実施状況報告書

近代日本における西洋技術の「日本化」過程

研究課題

研究課題/領域番号 21K18432
研究機関神戸大学

研究代表者

橋野 知子  神戸大学, 経済学研究科, 教授 (30305411)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2025-03-31
キーワード海外実業練習生 / 在来産業 / 繊維産業 / 絹織物産地 / 市場情報 / 選択的技術導入 / グローバル経済史 / 技術の「接ぎ木」
研究実績の概要

2023年度は、次の三点を中心に研究を進めた。一点目は、海外実業練習生報告のデータ整理の上、繊維産業の中でも織物産地にとって海外からどのような情報がもたらされ、その情報がどのように生かされたのかにポイントを絞って分析をした。詳細は、経営史学会全国大会要旨にゆずるが、「繊維関係」の分野を「練習科目」とした実業練習生を数えると、全体「のべ873人」のうち、198名を占める。「織」というキーワードでソートした場合の海外実業練習生終了者の時期別・地域別分布を作成すると、派遣先としては英・仏・米・中が目立ち、仏よりも中国への派遣が増えてきたことが分かった。
さらに「絹」をキーワードとして、『農商務省商工局臨時報告』を検討すると、一例として日本産の羽二重の問題点の詳細が記されている。またアメリカの市場においては、スイス製の羽二重と日本製の羽二重が競合していると評されている。加えて、その問題が生産工程のどこで発生したのかが探求されていることが分かった。日本製の羽二重が現地で加工され、その結果どのような用途に利用されているのかを知らせる報告は、まさに市場と在来産業の生産現場とを結ぶ試みであると推察された。同時に日本の競争相手であるアメリカの絹織物業(パターソン)の詳細な調査が報告され、在来産業の従事者に重要な情報を伝達している。さらに他の事例も検討し、全体像を描く作業が残されている。
二点目は、日本の在来産業である絹織物業のうち、最も先進的であった明治初期西陣の技術導入による産地の変化に関する論考を寄稿したGlobal History of Silkをリヨン第二大学のMartini・Vernus両教授と編集し、2024年にSpringerから刊行の運びとなった。
三点目は、『次世代の実証経済学』(大塚啓二郎他編、日本評論社)に、経済史の方法論について、国際比較を踏まえた論考を寄稿した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実業実習生の分析で最も時間をかけてきたのは、データベースの構築であるが、この点は、関西学院大学の木山実教授から大きなご教示を得、氏がすでに作成されたデータベースの利用を許可された。そのことにより、相当の情報量を得ることができ、仕事が進んだ。加えて、経営史学会全国大会のパネルセッションにも参加することとなり、報告とそれをもとにした原稿の作成に取り組んでいたのであるが、2023年度に全学的な組織のシンポジウムの企画・運営を担当し、そのことにかなりの時間と労力を取られることとなった。結果として、過労と極度のストレスから、11月末に激しい頭痛を起こし、救急搬送されるに至った。パネル報告をキャンセルし、その後は、スローペースで進めざるを得なくなったので原稿化するところに遅れが生じた。

今後の研究の推進方策

本年度は、「海外実業練習生と繊維産業-技術・知識の導入と接続の観点から」(昨年度の経営史学会全国大会で報告予定だった内容)をディスカッションペーパーにして、セミナー等で報告し、論文化する。論文は、海外実業練習生と産業発展をテーマとした本に寄稿する予定である。

次年度使用額が生じた理由

2023年11月末にすでに述べた理由で体調を著しく崩したため、本研究のまとめとなる論文の作業・執筆が遅れた。そのため、論文の完成のために必要な研究報告旅費、データ整理作業謝金・英文校閲謝金などの研究費の支出を2024年度にすることにした。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] Manuela Martini/Lyon 2 University(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Manuela Martini/Lyon 2 University
  • [国際共同研究] Pierre Vernus/Lyon 2 University(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Pierre Vernus/Lyon 2 University
  • [雑誌論文] 「飲み込まれる」経済史-経済学における経済史研究の存在意義2023

    • 著者名/発表者名
      橋野知子
    • 雑誌名

      大塚啓二郎他編『次世代の実証経済学』

      巻: 書籍 ページ: 213-232、239-243

  • [雑誌論文] 近現代日本経済史からグローバル・エコノミック・ヒストリーへ2023

    • 著者名/発表者名
      橋野知子
    • 雑誌名

      経済学の歩き方

      巻: 2023年度版 ページ: 103-109

  • [学会発表] 実証的経済史研究の国際化と課題-ミクロ実証経済学から経済史を考える2023

    • 著者名/発表者名
      橋野知子
    • 学会等名
      社会経済史学会全国大会(西南学院大学)
  • [学会発表] 1910年代福井輸出絹織物産地における構造変化:工場・家内工業・技術・製品」2023

    • 著者名/発表者名
      橋野知子
    • 学会等名
      グローバル経済史研究会(早稲田大学)
    • 招待講演
  • [学会発表] 福井産地の形成・発展・進化に関する歴史的考察-技術・製品・市場 第28回2023

    • 著者名/発表者名
      橋野知子
    • 学会等名
      進化経済学会 福井大会 オータムコンファレンス
    • 招待講演
  • [学会発表] From Lyon to Kyoto: Technology Transfer, Inflow of Knowledge, and Modernization of a Traditional Silk-Weaving District in Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Tomoko Hashino and Yukuo Murata
    • 学会等名
      The workshop for the book titled Global History of Silk
  • [図書] A Global History of Silk: Trade and Production from the 16th to the Mid-20th Century2024

    • 著者名/発表者名
      Vernus, P., Martini, M., and Hashino, T. eds.
    • 総ページ数
      -
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2024-12-25  

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