研究課題/領域番号 |
21K18446
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
矢田 勝俊 関西大学, 商学部, 教授 (00298811)
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研究分担者 |
里村 卓也 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (40324743)
中原 孝信 専修大学, 商学部, 教授 (60553089)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | COVID-19 / 消費者行動 / 感染モデル / 政策立案 |
研究実績の概要 |
COVID-19の感染拡大は国内経済に甚大な被害を与え、消費者行動にも大きな変化をもたらしている。感染症の拡大に関するモデルは様々なアプローチが試みられているが、様々な条件下でそれらのモデルが機能するかどうか、その頑強性を重視したアプローチはあまり見られない。 ビジネスにおける消費者行動に関する理論は、元来、感染症の古典的なSIRモデルから発展したものであり、コストや様々な制約等、複雑なビジネス環境での予測に強みがある。こうした消費者行動モデルの最新の知見を応用すれば、日本独自の医療体制や予算制約を前提にしたモデル構築、有用な知見を得ることが可能である。本研究の目的は、消費者行動に関するモデル、知見を用いてCOVID-19感染に対応するための有用なモデルを開発し、得られた知見をもとに政策立案を行うことであり、我々は消費者行動モデルを応用し、コストや様々な制約を考慮することに長けた予測モデルを構築した。 さらに政策立案の応用事例として、店舗または顧客による感染拡大前後の行動変容のモデル化を行い、企業の実データを用いてその有用性を検証した。COVID-19の感染拡大下において、プロモーション等への反応やカテゴリー間の購入行動の変化は顧客の異質性に影響を受けることが明らかになった。 本年度において、当初、予定していた研究内容は実施することができ、それぞれのモデル化に関する論文を完成することができた。しかしながら、一部の論文について、まだ査読プロセスの途中であり、発刊までには至っていない。今後、査読者の助言に従い、論文を修正していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、感染症の古典的なSIRモデルを発展させ、COVID-19の最新の感染モデルを構築した。従来のSIRモデルは様々な感染拡大モデルの原型となっており、消費者行動における新商品の普及モデルの原型でもある。消費者行動モデルは様々な制約条件をコントロールし、予測することに強みがあり、多様な手法が開発されている。本研究では、消費者行動の分野において開発されたモデルを発展させ、様々な制約条件で機能するCOVID-19の感染モデルを開発した。本研究で開発されたモデルは、医療体制や政策実施などの様々な制約条件において、柔軟な予測を可能にするものであり、汎用可能性が極めて高いものになっている。 さらにその応用研究として、店舗または顧客による感染拡大前後の行動変容に関するモデルを開発した。企業の実データを用いて検証したところ、様々なマーケティング変数と感染症に対する行動の変化に関係があることが示された。これらはパンデミック時の消費者行動理論として重要な貢献をもたらすものと期待される。 しかしながら、これらの公刊について、査読等の関係から公開が遅れている。データの整備に関する問題、モデルの改良について、またモデルの精度について検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、COVID-19の感染期間における消費者行動データを整備し、多様なデータ統合が可能な形で蓄積・管理する。パンデミック時の消費者行動データは貴重であり、今後、様々なデータと統合し、異なる知見を導出する必要が生じると考えられる。そのため、今回のデータベースを整備し、将来の発展的な研究に利用可能な形で整備していく必要がある。 また、開発したモデルについては査読者の助言に従い、モデルの精緻化に注力する。特に時系列モデルの導入については、まだ十分な検討が行われていない。最新の手法も含め、行動変容の時系列モデルを開発し、さらに発展可能なモデルの開発を行い、新しい知見の導出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発したモデルを検証した論文等を国際会議、国際学術誌に投稿したところ、様々な指摘を受け、その助言に従い、多くの修正が必要になったため、開発、検証を次年度に延期しなければならなくなった。次年度はこれらのモデル開発・修正を行い、公刊のために予算を利用する。また、パンデミック時の消費者行動データとして、他のデータと統合可能な形でデータベースを整備する。
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