研究課題/領域番号 |
21K18451
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
濱田 奈保子 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70323855)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 通電加熱 / 環境負荷低減 / 防災対応食品 / 官能検査 / 品質評価 / 生鮮魚介類 |
研究実績の概要 |
2022年度は開発した技術の汎用性を確認するため、対象となる食材を広げ、世界的に流通量が多いサバ類とサケ類を対象として実施しました。昨年度と同じ方法で作製した通電加熱試料の恒温試験および細菌試験の結果から、サバ類とサケ類についても、食品衛生法に基づく容器包装詰加圧加熱殺菌食品の製造が可能であることを確認しました。通電加熱を用いた場合、121℃到達までの時間は、レトルト加熱の3分の1程度であり、本研究で検討した通電加熱はレトルト加熱より環境負荷が低い製造方法であると考えられます。水分含有率、歩留り、IMP量の測定項目では有意差は見られませんでした(p>0.05)が、官能検査においてジューシー感や総合評価は、レトルト加熱した試料の方が通電加熱した試料より有意に高い結果となりました(p<0.01)。通電加熱時間がレトルト加熱時間に比べて短いことに起因して、食感に及ぼす破断強度は、通電加熱した試料の方が有意に硬く(p<0.01)、水分含有率や官能検査のジューシー感の結果にも関係し、レトルト加熱した試料の方が柔らかい状態になることが示唆されました。官能検査の香りの項目においては、通電加熱した試料の方が有意に高い評価が得られました(p<0.05)。このことから通電加熱した試料は、加熱時間が長く、加熱前に包装するレトルト加熱製造法では実現できない、レトルト臭の発生を抑制できる製造方法になり得る可能性が示されました。さらに、加熱前に試料を食塩水に浸漬させることにより、歩留まり向上に加え、官能検査項目である歯ごたえで有意差(p<0.01)が見られ、後味と総合評価でも有意差(p<0.05)が見られたことから、通電加熱した試料の方がレトルト加熱した試料より高い評価結果になりました。特にサケ類については、1年間常温保管した後でも色素の退色が観察されず、品質が維持されていることを確認しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに開発した通電加熱と無菌包装を組み合わせた新規加工技術の汎用性を検討するにあたり、今年度は対象となる食材として、サバ類とサケ類を対象として実施した結果、長期間常温保管可能であることが確認できました。また、品質評価および官能評価の結果から、防災対応食品となり得ることが明らかとなったことから、概ね順調としました。また、製造過程で排出される二酸化炭素を、本研究で開発した長期常温保存技術を用いた場合と従来のレトルト加熱殺菌技術を用いた場合で比較することにより、原料調達段階から消費・廃棄に至るまでの食品のライフサイクルにおける環境影響評価についても試算が終わりました。来年度には学術論文として公表できる予定です。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、我が国における輸出の重要品目であるホタテを対象食材として実施する予定です。通電加熱したホタテは、レトルト加熱したホタテに比べて見た目が白く、褐変が生じにくいという現象が確認されています。この機序解明についても進めて行く予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ渦の影響で、予定していた実験(食品製造と品質評価)回数が最小限になってしまったこと、環境影響評価に使用する解析ソフトが無料で使用できたため、次年度使用額が生じました。次年度は検討を重ねるために実験(食品製造と品質評価)回数を増やし、これまで検討していない生鮮食材の購入にも次年度使用額を充てる予定です。また,学術論文の公表に係る経費(論文投 稿料)としても、使用する予定です。
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