研究課題/領域番号 |
21K18457
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小笠原 理恵 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (70814375)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | マイノリティ・ヘルス / 新型コロナウィルス感染症(COVID-19) / 多文化社会 / オンライン調査 |
研究実績の概要 |
9月に助成金の交付決定が出たのを受け、10月に研究班を立ち上げた。当初の計画では、英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語の4か国語を対象としたが、ベトナム語を母語とする若手研究者に研究協力者としてご参加いただけることになったため、ベトナム語を追加して対象言語を5か国語に増やした。 アンケート調査を実りあるものにするためには、調査項目の策定が極めて重要である。そのため初年度は、班会議を重ね、調査項目について十分な議論をすることに重点を置いた。結果、班会議を述べ8回開催し、まずは日本語でアンケート調査の質問項目が策定できた。続いて、策定された質問項目の各国語への翻訳作業を開始した。 研究実施にあたって必要となる研究倫理について、大阪大学人間科学研究科・共生学系で研究倫理審査を受け、承認された。 オンライン・アンケート・ツールとしては、当初予定していたSurveyMonkeyではなく、Qualtricsを使用することにした。Qualtricsは研究代表者が所属する人間科学研究科内で、共用で使われているツールの一つであり、問題があったときの対処が容易である。策定された日本語の質問項目をベースに、オンラインツールのシステム構築を完了した。 その他、自治体が開催する市民向け公開講座に講師として登壇したり、公益社団法人日本WHO協会が開催するオンラインセミナーなどを企画・運営したりすることで、日本に住む言語的・文化的マイノリティ住民の保健医療受診の現状について、アカデミアのみならず一般市民に向けて情報発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症の影響により、助成金の交付決定が4月から9月に延期されたことに伴い、事業の開始時期も10月にずれ込んだ。アンケート調査を実りあるものにするために、調査項目の策定に際して研究班会議で熟考を重ねる必要があったこと、とりわけ新型コロナウィルス感染症の第5波、第6波の到来にも対応すべく、その都度質問項目を精査し直す必要がでてきたことなどで、全体的な作業は、当初の計画よりも若干遅れている。ただし、これらの遅れは想定内であり、十分取り戻せる範囲内だと考えている。すでに研究協力者たちによって、各国言語への翻訳作業はほぼ終了している。オンライン・アンケート・ツールQualtricsに関しても、ベースとなる日本語のシステムはすでに構築済みであり、テストランも終了している。また、調査実施にあたって必要な研究倫理審査に関しても、大阪大学人間科学研究科・共生学系の倫理審査委員会からすでに承認を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究班会議を定期的に開催する。各国語の翻訳をオンライン・アンケート・ツールQualtricsに反映させ、オンライン調査を開始する。オンライン調査は3か月間を予定しているが、研究班会議での議論によっては、短縮・延長もあり得る。調査開始と同時に、研究班会議においてインタビュー調査に向けた議論を進め、インタビューガイドを策定する。オンライン調査と並行して、回答者の中からインタビュー調査対象者を抽出し、適宜インタビュー調査を開始する。インタビュー調査対象者の抽出に際しては、年齢や性別、居住地などの属性を考慮したうえで、各言語5名前後を予定している。 オンライン調査で得たデータとインタビュー調査で得たデータを統合し、研究班会議によって全体の考察および投稿論文の検討に入る。国内の学術誌に加え、海外の学術誌にも積極的に投稿を検討する。研究協力者の希望や同意によっては、日本語と英語以外の発信も積極的に検討する。 論文の投稿準備と並行し、シンポジウムを開催して研究調査の最終報告会を実施する。シンポジウムには、行政担当者、医療従事者、支援団体等の関係各位を招く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
オンライン調査ツールとして、SurveyMonkeyの使用料を言語担当別に4ユーザー分計上していたが、所属機関において別のツールであるQualtricsを共同利用できることになり、本研究でもそちらを援用することにした。助成金交付の遅延に伴って研究に着手する時期もずれ込んだため、データ分析ツールの購入を来年度に見送った。同様の理由から、アンケート調査の各国語翻訳の謝金の支払いも翌年度に見送った。計画の段階では、研究班会議を対面で実施予定であったが、長引くCOVID-19の影響によりオンライン会議に切り替える必要があった。以上の理由から、経費を大幅に翌年度に繰り越す必要が生じた。 翌年度は、前年度からの繰り越しでデータ分析ツールの購入とアンケート調査の各国語翻訳謝金を執行する。状況が許せば対面での研究班会議を実施して議論を深めるとともに、質的研究(インタビュー調査)についても、状況が許す限り、対面での実施を推奨して生の声をしっかりと拾い上げる。予算の大部分は、そのための国内旅費および研究班メンバーの謝金、最終報告会のシンポジウム開催経費として使用予定である。
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