研究課題/領域番号 |
21K18458
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井口 克郎 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10572480)
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研究分担者 |
太田 和宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (00273748)
岩佐 卓也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (00346230)
原 将也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (00823147)
浅野 慎一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (40202593)
澤 宗則 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (40235453)
加戸 友佳子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 部局研究員 (50849370)
岡田 章宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (70185429)
橋本 直人 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80324896)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 健康権 / 新型コロナウイルス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行に対する日本及び各国政府の政策的対応や市民社会の諸反応について、国際人権規約第1規約(以下、「社会権規約」)12条に規定されている「健康権」(right to health)の枠組みから、それらの妥当性や問題点を検証し、かつ、この戦後未曾有の感染症災害から明らかになった既存の健康権規定の不十分な点のバージョンアップを提案し、今後の感染の進行や、新たな感染症災害等の発生時における望ましい対応のあり方を明らかにすることにある。 研究1年目の2021年度は、健康権の枠組みから各国のコロナ対応を評価するにあたって、健康権規定の内容や日本への適用状況に関する考察を進めるとともに、研究メンバーらがこの間関与している世界中の国々のコロナ下での出来事や、行政、産業界、市民社会などの多層のレベルにおける対応等について、定期的に研究会を開催しながら情報の共有と多角的考察を行った。 一例をあげれば、「危機」における人権の制限や特定の行為の強制といった問題である。ドイツでは従来、ワクチン接種の義務化について慎重な意見が強かったが、その後義務化を求める政治的動向が強まっている。また日本においても、2020年の首相による全国一斉学校休業要請など、政府による法的根拠のない決定によって学校現場の運営がコントロールされる事態が生じた。 コロナ禍においては、「危機」事態という認識によって、各国共通して政治権力者が既存の制度や法的統治システムの枠組みを逸脱した行動ないし統制を行おうとする現象が見いだせるが、こういった事態の問題点や、「平時」「危機」概念から社会をとらえること自体の危険性などについて検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定期的に研究会を開催し、健康権概念や各国のコロナ対応の状況を検討するなど、おおよそ当初想定していた研究活動を行うことができた。研究1年目であるが、後述のように一定の論文執筆や、学会報告等ができた。健康権や新型コロナウイルスへの対応の評価を直接的に含むものから、健康権の前提となる国連・立憲体制や経済システム、市民社会の運動原理にかかわる概念に関する研究まで、幅広い学問分野への成果を含んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、引き続き定期的に研究会を開催し、メンバー間での情報共有や検討を行ていく。コロナ禍等の状況を見ながら、外国の現地調査に基づく情報収集を合わせて行っていく予定である。 また、健康権に内在する自由権と社会権の対立、といったことを踏まえれば、この間のこのコロナ禍で急速に進行する、国家や企業による最新技術を用いた市民データの収集とその利用も、検討を避けて通れない課題である。コロナ禍によって生じている現在進行形の問題や、また今後発生する新たな問題についても臨機応変に検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目は主に新たな情報を取得すべく図書費を多く計上していたが、コロナ禍以降地道に蓄積してきた各人固有の手持ちの情報を基にした研究業績の執筆が予想以上に進み、執筆に時間を多く費やしたため。2年目以降に引き続き有効に活用する。
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