本研究の目的は、新型コロナ・ウィルス感染拡大の前後の子どもへの調査のデータを用いて、コロナ禍の休校や親の就労状況の変化等による子どもへの影響が、どれほど社会経済階層(SES)や世帯タイプ、親の就労状況等子どもの属性、およびコロナの親の就労への影響度によって異なるのかを明らかにすることである。初年度においては、分析の結果をいち早く、行政、メディア、一般市民に周知するために公開シンポジウムを開催した。また、3本の論文を公表した。2022年度においては、さらに1本の学術論文にまとめた(現在、投稿中)。また、自治体への報告書を作成し、政策立案のエビデンスとして提出した。 本年度の研究からの新しい知見をまとめる。まず、東京都X区が2020年9月に全区立小学校の全5年生を対象とする「子どもの生活実態調査」の個票を用いた分析においては、コロナ禍の休校の間に、多くの子育て世帯が収入の減少、労働状況の変化(勤務形態や労働時間の変化)、支出の増加を経験している。また、一部の世帯において親の子どもに対するマルトリートメントが増加したが、この増加の要因として、収入の減少だけでなく、労働状況の変化および支出の増加がそれぞれ独自の要因として関連していることがわかった。また、第二の知見として、東京都Y市の「子どもの生活実態調査のコロナ前(2017年)とコロナ後(2022年)の調査データの比較から、コロナ後は子どもの家ごもり傾向が強まったこと、主観的学力の格差が拡大したことが明らかになった。
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