研究課題/領域番号 |
21K18470
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
藤原 佳典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (50332367)
|
研究分担者 |
村山 陽 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90727356)
高橋 知也 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90813098)
西 真理子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (70543601)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
キーワード | ボランティア / 社会参加 / 心理的負担感 / 苦慮体験 |
研究実績の概要 |
ボランティア活動に着目して心身の健康への効果を検討した先行研究は多く(Nonaka, et al. 2019)、代表者らのレビューやその後蓄積された多くの縦断研究から、ボランティア活動に参加する高齢者は非参加者に比べて生活満足度や主観的健康感が高いといった報告がなされている。また我々は、「気が進まないのにボランティア活動へ参加しても健康維持には寄与しない」ことを示した。そこで、ボランティア活動のネガティブな側面(負担、不安、不満など)が与える心身の健康への影響や、活動意欲の低下または中止へと至る機序を明らかにするために、こうしたネガティブな側面を客観的に把握できる評価尺度(仮称:ボランティア活動ネガティブチェックリスト:以降、ネガティブCL)の作成を試みることとした。予備一次調査として、ネガティブ効果に関する質問紙調査を実施した。質問紙調査は、2021年11月から2022年2月にかけて郵送法により実施した。調査対象者は、NPOりぷりんと・ネットワークに所属する会員(退会・休会を除く)453名として実施し、404名(回収率:89.2%)から回答を得た。質問項目は、ボランティア活動への負担・不安・不満、ボランティア活動の内容等及び自由記述欄を設けた。現在、データベースを作成し、量的、質的に分析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は一次予備調査として、ネガティブな側面に関する質問紙調査に向けて作業部会を立ち上げ、質問項目を精査し、質問紙を作成した。質問項目は、ボランティア活動への負担・不安・不満、ボランティア活動の内容、活動の期間、頻度、活動団体における役割(代表・役員等)、活動組織の運営状況、基本属性、NEO性格検査、抑うつ傾向、精神的QOL、心理的ストレス反応尺度、健康度自己評価、心身機能、既往歴、生活習慣等とした。また、質問項目には自由記述欄を設け、それらを質的に分析することでネガティブCLのアイテムプールを作成することとした。 質問紙調査は、2021年11月から2022年2月にかけて郵送法により実施した。調査対象者は、絵本読み聞かせボランティア団体で形成するNPO法人りぷりんと・ネットワークに所属する会員(退会・休会を除く)453名として実施し、404名(回収率:89.2%)から回答を得た。現在、分析を進めている段階にある。 2021年度に計画していた第二次予備調査であるインタビュー調査は、新型コロナウィルス感染症の流行拡大に伴い、対象者が高齢者であることに鑑みて2022年度に実施することとした。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度に実施予定であった第二次予備調査を実施する。2021年度の調査回答者の中で同意を得られた方を対象に、半構造化面接法によるインタビュー調査を実施し、ネガティブな側面について質問調査や自由記述だけでは明らかにできない事柄を見出していく。調査の対象者は、現在のボランティア活動に対して、(a)負担・不満・不安などネガティブな要因の強い人、(b)これらネガティブ要因により活動辞退意向のある人、(c) ネガティブ要因により過去に活動の辞退経験のある人50人とする。 2022年度においては、2021年度の自由記述欄や面接調査から得られた知見を元に、ネガティブCLの素案作成には、研究者・行政職・地域実務者からなるワーキンググループを結成する。仕上がった素案項目をプレテストし、微修正等を行う。 2022年10月~11月にネガティブCL素案妥当性検証のための質問紙調査を行う予定である。対象者は、2021年度の質問紙調査の対象者と同様のNPOリプリントネットワークに所属する会員(退会・休会を除く)約450名とする。ネガティブCLのアイテムプールを作成し、それらを用いてネガティブCLの信頼性と妥当性を検証し、ネガティブCL開発を行う。具体的には、得られたデータを用いて、探索的因子分析により評価尺度の下位尺度を構成し、α係数の算出により信頼性を検討する。さらに、本尺度の基準関連妥当性を検討するため、精神的健康の既存尺度(SRS-18、GDS-15、WHO-5等)との関連も検証する。その後、共分散構造分析により、個人の特性により「ボランティア活動のネガティブな状況」が健康アウトカムへの影響する機序を説明する「ボランティア活動ネガティブ要因―健康関連モデル」の作成を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には、ボランティア活動ネガティブチェックリスト(ネガティブCL)の作成を目指し、地域内で日常的にボランティア活動をしている高齢者を対象としたインタビュー調査を実施予定だったが、コロナ禍という社会的にも対面でのインタビュー調査が難しい状況だった。多くの調査対象者は高齢者であるため、デジタル機器を活用した非対面でのオンラインインタビューの実施も容易でなかった。これらの理由から、やむなくインタビュー調査を延期し、それに合わせて費用も次年度に使用することにした。 社会状況によっては、インタビューが出来なくなる可能性もある。そこで、2022年度は、質問紙調査において、自由回答欄を多く設計し、広く高齢者が普段のボランティア活動で感じているネガティブな側面(負担、不安、不満)の収集につとめたい。その結果をもとに、一部の少人数の高齢者に向けて、不足する情報の聞き取りや、必要な深掘り調査を実施する。 これにより、本年度はネガティブCLの素案を作り、その妥当性を検証する。最終的には、「ボランティア活動のネガティブな状況」が健康アウトカムへの影響する機序を説明する「ボランティア活動ネガティブ要因―健康関連モデル」の作成を目指している。
|