研究課題/領域番号 |
21K18478
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐島 毅 筑波大学, 人間系, 准教授 (20241763)
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研究分担者 |
福田 奏子 宇都宮大学, 共同教育学部, 助教 (20844799)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 触運動感覚 / 漢字書字 / 分数学習 / 教材 / 指導法 |
研究実績の概要 |
触運動感覚を活用した分数学習教材の開発・評価研究を実施した。視覚障害教育を専門とする大学教員および大学院生による協議に基づき、子どもが直感的に操作しながらイメージ化することのでききる触―運動感覚に依拠した分数学習教材を作成・開発した。盲学校中学部の盲生徒8名を対象に、点図を用いた介入指導と開発をした操作可能な教具を用いた介入指導の二種類の介入指導をクロスオーバー法で実施した。その結果、計算の仕組みの原理・原則については点図介入指導と教具介入指導によって課題を達成した協力者の人数に、ほとんど差がみられなかったが、立式については介入指導前にわられる数とわる数を誤って逆に認識していた協力者2名が教具介入指導によって正しい回答を述べることができた。このことから、操作可能な教具は立式の際に、わられる数とわる数を適切に認識する上で効果的であることが示唆された。加えて、内省の聞き取りにおいても操作可能な教具を支持する回答が多数みられた。操作可能な教具がイメージ形成の一助となった旨を示す「立体的に操作できるのが、イメージに繋がる」や「わる数が円の形になっており、正円にすれば数が求められるという仕組みがわかりやすい。」といった回答も得ることができた。実際の指導法としては、操作可能な教具の教授法(手順)が複雑であること等の課題が明らかになった。 漢字書字教材については、パワーポイントを用いた初等教育出現漢字全てについて動的呈示による教材を弱視通級指導教室教員、視覚障害教育を専門とする大学教員および大学院生による協議に基づき作成し、それらについて学会にて報告した。また、ホームページからダウンロードして活用可能なコンテンツ、「動く漢字筆順教材」として教科書の単元順に整理し、全国で利用可能な教材として完成をさせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分数学習教材について試作・開発を行い、盲学校の生徒を対象に介入研究まで実施をすることができた。その有用性についても一定の知見が得られるとともに、開発した教材については製品化に向けた取り組みまで展開を図ることができた。さらに、「動く漢字書字教材」を完成させ、全国で活用可能なようにホームページで公開をする等、当初の計画よりも進展をすることができた。新型コロナウイルス感染症の拡大のため中止せざるをえなかった視察調査は今後、実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、触運動感覚に依拠した漢字書字指導法の開発研究として、触図作成方法(立体コピー・立体イメージサーマルプリント・点図プリント)で作成し、どの素材が触漢字教材として適しているかを検証研究を行う予定である。また、検証した素材によって触漢字教材を作成し、漢字書字に困難を有する弱視児、視知覚障害児、発達障害児を対象に、未習得漢字に対する触漢字教材による漢字指導を行い、正しく漢字書字ができたかを指導直後に評価するとともに、一定期間後の維持状況を評価する。同様に、研究1-3では小学生を対象に未習得漢字の触漢字教材による指導効果を評価する。 分数教材については、分数学習の基礎となる分解合成について、触運動感覚に依拠したマグネットの立方体教材による指導方法を算数科教科書の内容に沿って整理/作成し、指導課題の試案を作成する。それらを実際に盲学校小学部の児童に活用してもらい、その有用性について教員による面接調査および行動観察から評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
小学校低学年の分数学習につまづきのある障害のある子どもを対象に、開発教材を用いた指導を個別的を行い、指導前及び指導後に分数理解に関する評価を行う予定であったが、COVID-19感染拡大にともない、教育現場における実地調査が難しい上京となった。このため、これらの調査については一部計画を変更の上、次年度以降に実施することとし、それにかかる旅費等を次年度へ充てることとしたため。
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