研究課題/領域番号 |
21K18479
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
唐木 清志 筑波大学, 人間系, 教授 (40273156)
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研究分担者 |
秋吉 恵 立命館大学, 共通教育推進機構, 教授 (00580680)
秋元 みどり 青山学院大学, ボランティアセンター, 助手 (20729959)
倉本 哲男 横浜国立大学, 大学院教育学研究科, 教授 (30404114)
石筒 覚 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 准教授 (50314977)
宮崎 猛 創価大学, 教職研究科, 教授 (50440227)
市川 享子 東海大学, 健康学部, 講師 (80803395)
山口 洋典 立命館大学, 共通教育推進機構, 教授 (90449520)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | サービスラーニング / パートナーシップ / 初等中等高等教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、初等・中等・高等の各教育段階で様々に取り組みが進められているサービスラーニングに注目し、パートナーシップという観点よりその再検討を行い、パートナーシップに基づくサービスラーニングの実装化に向け、プログラムの開発・評価モデルを確立するとともに、モデル実施を可能とする方法を解明することであった。 3年間に及ぶ本研究の1年目にあたる今年度は、以下の三点に関して研究を進めた。 第一に、プログラムの開発・評価モデルの基盤となるSOFARモデルについて、研究代表者及び研究分担者の間で相互理解を深めた。サービスラーニングをパートナーシップの観点より捉えるにあたり、SOFARモデルは有効なツールとなるが、その理解は必ずしも研究代表者及び研究分担者の間で一致しているわけではなかった。そこで、基本文献を読み合い、SOFARモデルを正確に理解するところから始めた。 第二に、自身が開発・運営に関わった実践をSOFARモデルの枠組みから分析を進め、SOFARモデルの可能性と課題を追求した。その結果、SOFARモデルの基本的な考え方や方法は、サービスラーニングをパートナーシップの観点より捉えるにあたり有効であることに異論はないが、アメリカ合衆国で作成されたSOFARモデルをそのまま日本に持ち込んで分析のツールとすることに関しては、様々な困難が伴うことが確認された。そこで、SOFARモデルに部分的に改良を加え、新たなモデルを構築することになった。 第三に、日本版SOFARモデルとも言える新たなモデルの開発を進め、同時に当該モデルの導入に適した対象校の選定に努めた。新たなモデルでは、SOFARモデルで注目された五つの利害関係者(Stakeholders)を四つにしたり、一つ加えて六つにしたりといった柔軟性について検討が加えられた。その上で、小学校・中学校・高等学校の選定を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況に関しては、「やや遅れている」という判断をせざるをえない。そう考える最大の理由は、SOFARモデルの具体的な運用場面を、アメリカ合衆国の現地において確認できなかったからである。また、日本の文脈に即して改良が加えられた新たなモデルを、日本で取り組まれているプログラムに適用させて分析することも十分に実施できなかったからである。いずれも、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する、国内外における行動制限のためである。 そこで、本研究では、そのような困難状況でもできることを模索しつつ研究を進めた。一部、当初の計画に変更を加えた点もある。その結果、研究が行き詰まってしまうほどの大きな問題は生じることはなく、次年度に向けて研究を本格化できるような基盤づくりは十分に行うことができた。 SOFARモデルの理解を深め、研究代表者と研究分担者の間で相互理解を深められたことは成果の一つである。オンラインであったが、SOFARモデルに関わる情報を、アメリカ合衆国の専門家から意見聴取することもできた。また、サービスラーニングに関わる最新の情報を、アメリカ合衆国で開催されたサービスラーニングに関する学会にオンライン参加することで得ることもできた。当該学会では、研究分担者の一部が研究発表も行っている。 研究代表者と研究分担者の参加する研究会における協議を経て、SOFARモデルに基づきつつも、日本の文脈に即した新たなモデルを開発することに至ったことも大きな成果の一つである。そもそもSOFARモデルは高等教育を念頭におき開発されたものだが、本研究では初等教育及び中等教育も念頭においている。初等・中等・高等教育の一貫性という観点よりSOFARモデルの精緻化を図ることで、日本におけるサービスラーニングの発展のみならず、世界レベルでのサービスラーニング研究の発展にも寄与することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当初の計画通りに進めることができる。新型コロナウイルス感染症の影響で、渡米が叶わない場合でも、オンラインで現地と連絡を取ったり、また、計画に一部修正を加えたりして、研究方策を練ることによって研究を前進させることは可能である。 令和4年度(研究2年目)には、プログラム開発・評価モデルを、日本版SOFARモデルに基づいてさらに洗練化させる。そのため、現在のところ研究代表者と研究分担者が関わるプログラムに限定的となっている分析対象をさらに拡大させ、複数の初等・中等・高等教育の学校に対して実施することが必要になる。すでに、分析対象校の選定はほぼ終了しており、研究代表者と研究分担者が分担をして、今後は新たに開発されたモデルの実施可能性を追求することになる。分析対象校は多くの場合、そのままプログラム開発・評価モデルの実施校とすることを計画している。令和4年度中に対象校において実施できる体制を整え、対象校に即してプログラム開発・評価モデルをカスタマイズした上で、部分実施まで漕ぎ着ける予定である。 令和5年度(研究の3年目)には、プログラム開発・評価モデルの実施を本格化させるともに、得られたデータに基づいて、当該モデルの改良を行うことを計画している。また、プログラム開発・評価モデルとは別に、実際に導入するにあたって生じる課題を解決するための具体的な方法(手続き)に関しても同時に解明することになる。プログラム開発・評価モデルと、この具体的な方法を文書化して、社会に向けて広く発信していくことも、当該年度における大きな行動目標となる。 なお、研究代表者と研究分担者は共同して、自主組織「サービス・ラーニング・ネットワーク」を運営し、本研究の推進に努めている。今後も、同組織の主宰する研究会等で、適宜研究成果を発信するとともに、そこで得られた声を研究の深化に活かすこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外旅費(アメリカ合衆国への現地実態調査)と国内旅費(学校訪問によるインタビュー調査)を、新型コロナウイルス感染症の影響で実現できなかったために、旅費の執行を行えなかったことが、次年度使用額が生じた最大の理由である。令和4年度に国内外の移動が可能となれば、この次年度使用額を有効に活用して、国内外の現地における対面調査を行う予定である。 また、新型コロナウイルスの影響で継続的に国内外の移動が困難なことも考えられるので、そのことを念頭に置き、オンラインによる調査を中心的に行うように計画を一部変更し、通信環境を整備することを目的にPC等を購入することも検討する。また、同じく物品費にて、研究資料を購入することにより、研究を充実させることも検討する。 いずれにしても、次年度使用額として多くの配分額が残っていることは事実であるので、早急な執行を目指して、使用計画を再検討することとする。
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