本研究は高度情報化時代において高等教育政策がどのように形成・決定されるのかを、その政策過程の初期段階に着目して、①問題群とその範囲、②参加者と関係性、③生成・構築される物語・イメージ、という3課題を設定し、ネット空間での大規模な情報からデータセットを構築し、自然言語処理による分析を試みることを目的とした。当初、スクレイピングソフトの利活用を計画していたが、Twitter(現X)、国会会議録など公開・提供された大規模データを学術利用してPython等のプログラム言語によりデータベースを構築し、分析を進めることとした。 研究期間の2年度目までに、研究協力者である西村幸浩、寺田悠希、鎌田健太郎の諸氏とともに、国会会議録検索システム検索用APIを利用し、2000年代以降の衆参両院の文教関連委員会におけるデータを収集し、この時期に新たに台頭してきた国会議員と政策課題の特徴や趨勢を考察した。最終年度では、得られた知見と課題を踏まえた上で、Twitter APIを利用して収集・作成した2006~2022年における国会議員のTweetのデータセットから、所属政党ごとの差異に着目しながら「大学」について言及されたTweetに限定してトピック分析を行い、高等教育に対する国会議員の国民に対する情報発信のあり方について、特に国会審議との異同を明らかにした。また2007~2022年の「放送大学」が含まれる全てのTweetを対象に、「関係者」と「非関係者」との比較を軸に計量テキスト分析を行い、大学の社会的イメージを析出し、その変容を跡づけた。 当初の研究計画が十全に完遂できたとは言いがたいものの、高度情報化時代における国会議員の高等教育への意見・方針の発信の内実と、社会一般からの大学イメージの一端を明らかにした点で、今後の高等教育をめぐる政治コミュニケーションを理解する重要な地歩を確保できた。
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