研究課題/領域番号 |
21K18497
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邊 洋子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (70222411)
|
研究分担者 |
犬塚 典子 田園調布学園大学, 子ども未来学部, 教授 (70400471)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 専門職教育学 / 高度専門職 / 専門職継続能力開発(CPD) / 生涯継続教育 / 領域横断型専門職教育教材 / 領域横断型専門職教育研修 / 生涯キャリアデザイン教育 / 生涯キャリアヒストリー法 |
研究実績の概要 |
本研究は、先端的な高度専門職諸領域における人材育成の質保証において肝要な「専門職教育学」(「専門職を教え・育てること」に関わる、職域横断的かつ汎用的な理論的・実践的な知の体系)の構築に取り組むものである。医歯薬・看護など医療系専門学部・大学院、法科大学院、会計・公共政策などの専門職大学院、研究大学院など、異なる職域や足場で高度専門職の養成教育に携わる、専門職教育者の知に焦点を当てる。 専門職養成に携わる教員の大多数は、当該領域で優れた専門性を持つ一方、日々の教育実践に必要不可欠な教育学的基盤、特に成人学習者理解や成人を「教える」ため(成人教育/成人学習支援)の諸理論、実践方法論、教授倫理などの獲得機会に乏しい。ゆえに、本研究は、複雑化・専門分化する専門職域の教育者に、領域横断的に適用される専門職教育学の体系的な構築、そこで汎用的に有効となる専門職教育教材の開発、およびそれらを活用した教育・研修プログラムの開発を目指している。 本研究では仮説的に、専門職教育学の柱として、Ⅰ成人教育学的領域、Ⅱ、職域や業界に特有の職業教育的領域、Ⅲ、生涯キャリア/キャリアデザイン教育的領域、の3つの領域を設け、各領域に同時並行的にアプローチしていく。 2021年度は、①専門職教育の観点からの成人教育学の研究文献(ジャーヴィス、ショーン、ウェンガー等)の再検討、②分担者犬塚典子氏(比較教育学・教育行政学・高等教育学)とのフレームワークに関わる研究協議(以上、Ⅰ)、③医療・法曹・会計・教育・福祉専門職に関わる主要学会の研究・実践に関わる情報収集、④医療専門職(医師・看護師等)の教育担当者からのヒアリング(以上、Ⅱ)、⑤医療専門職の生涯キャリア形成に関わるヒアリング、⑥キャリアデザイン教育の一環としての生涯キャリアヒストリー法を用いた実践的研究(代表者の基盤B科研と連携)(以上、Ⅲ)、に取り組んだ。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、本研究については、代表者が別途取り組んできた科研研究(基盤B、「女性医療専門職におけるキャリアヒストリー理論の実践的構築および適用に関する研究」代表者:渡邊洋子)とは、少し異なる地点からアプローチすることを構想していた。すなわち、上記(研究実績の概要)の「専門職教育」の3領域のうち、Ⅰ(成人教育学的領域)とⅡ(職域や業界に特有の職業教育的領域)のみを念頭に置いていた。だが、研究を進める中で、「専門職教育」の構築には、Ⅲ(生涯キャリア/キャリアデザイン教育的領域)の存在が不可欠であると気づくに至り、ⅠとⅡも、Ⅲとの有機的関連を意識しながら取り組む必要があることを認識した。これらを踏まえ、新たにⅢの領域を専門職教育の1領域として明確に位置づけることとした。以後、生涯キャリアヒストリー法を活用した実践的取り組みは、基盤Bの文脈における当事者にとっての生涯キャリアの視点に加え、高度専門職にとっての生涯キャリア/キャリアデザイン教育の一環としての可能性を追求する新たな視点と合わせて、2つの角度から取り組むことが可能になった。 そのような実践的成果には、21年7月の日本医学教育学会でのワークショップ、22年2月の医学書院セミナー「医療者のための生涯キャリアヒストリー法―医療者としての「これまで」を振り返り、これからを築く」、同3月の新潟大学医学教育センター(ひと尋の会)ワークショップ 「生涯キャリアヒストリー法とはー女性医師の課題点と医療人キャリア教育に向けてー」などがある。 また、以上の経過を受け、生涯キャリアヒストリー法を用いたワークショップにおける省察的学習とその支援を概観した論文「専門職者にとっての生涯キャリアヒストリー法 : 名称変更の経緯と背景、および省察ツールの機能と可能性」(『創生ジャーナルHuman and Society』第5巻、2022)などをまとめている。
|
今後の研究の推進方策 |
22年度は、Ⅰ~Ⅲの3領域を中心に、次のような取り組みを通して、研究を推進する。 Ⅰについては引き続き、21年度の作業を継続しつつ、専門職教育学の構築という文脈における、成人教育学の先行研究の(文献、論者、論点に関わる)再吟味と整理、および学習/学習支援の論理を軸とするマッピングの作業を行う予定である。 Ⅱについても引き続き、医療に加え、法曹・会計・公共政策・教育福祉などの領域における専門誌に注目し、それらの特集記事や実践研究報告などを中心に、専門職養成に関わる全体動向と論点を明確化する。ヒアリングの対象も、これらの領域に広げ、引き続き、実施する。 Ⅲについても引き続き、生涯キャリアヒストリー法を用いた省察的思考・学習とその支援に関わって、理論的探究と実践的取り組みを継続する。実践的取り組みについては、21年度はすべてオンラインでの実施だったが、22年度については、支障のない範囲で、対面の可能性をも検討していきたい。 以上に加え、イギリス・カナダでの専門職教育の研究・実践動向の実地調査が必要であるが、新型コロナ感染への対応が現在、国や社会の状況により、まちまちであり、今後もまだ変化が予測されることから、渡航や実地見学、ヒアリング調査などについては見通しが十分に持てない点が、大きな課題である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染により、海外および国内出張が不可能であったため、旅費に関しては次年度に状況が改善された段階への延期を決め、当該金額を次年度に繰り越すこととした。
|