研究課題/領域番号 |
21K18508
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
橋爪 一治 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (70709740)
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研究分担者 |
伊賀崎 伴彦 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70315282)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | アルファベット / 小学校外国語 / 書字巧緻性 / ハプティック感覚 / 振動刺激 / ラバーハンド錯覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,アルファベット等の書字という身体動作を形式知に変換することなく,自分自身が行っているような運動主体感のある疑似体験によって暗黙知のまま直接学習者に伝達し,文字を書けるようにする指導法の開発である。 われわれのこれまでの研究では,どうしても機械に手を操られているという感覚が残ってしまい,学習者に自ら巧緻動作を行っている感覚を味わわせられなかった。 そこで,本研究は,われわれが研究してきた感覚刺激法に,既知の事実として知られている,手首の伸展筋の腱に80Hz程度の振動刺激を与えて得られるラバーハンド錯覚(RHI)を応用した振動刺激を加えて,より現実感の強い錯覚(以下,「ハプティック錯覚」という)をつくりだし,運動主体感を持たせることで,文字を書くための手指や上肢等を制御するタイミングや動作量を直接理解・認知させ書字能力の獲得や「うまさ」の発達を促す新しい手法を試みる。 しかし,本研究の中核をなすRHI現象には未解明な点が多く,書字という固有技能について,上肢や手指のどこに,どれだけの振動刺激を与えると効果的なのかという当該現象の詳細は明らかではないため,RHIについては書字技能に最適な刺激方法を見つけ出すなどの基礎的な技術開発から始めることとした。 そこで,本年度は,振動刺激装置の開発を行ってきた。つまり,上肢や手指の効果的な振動刺激を検証する装置である。同時に,これまでの力覚デバイスについて,ユーザーインターフェースを充実させるなど,振動刺激と力覚という暗黙知の伝達に欠かせない基礎的なシステムの開発に取り組んできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は2つに分けて進めた。第1に,振動刺激装置の開発を行ってきた。つまり,上肢や手指の効果的な振動刺激を検証する装置である。本研究の中核をなすRHI現象には未解明な点が多く,書字という固有技能について,上肢や手指のどこ(一カ所か複数箇所かを含む)に,どれだけの振動刺激(何Hz)を与えると効果的なのかという当該現象の詳細は明らかではない。そこで,RHIについては書字技能に最適な刺激方法を見つけ出すなどの基礎的な技術開発から始める。これには,振動刺激装置が欠かせない。このため,4チャンネルの振動刺激を与えることができ,しかも,振動数,振動時間,各チャンネルからの振動発生を任意に決められる装置を開発してきた。 第2に,これまでの力覚デバイスについて,ユーザーインターフェースを充実させるなど,振動刺激と力覚という暗黙知の伝達に欠かせない基礎的なシステムの開発に取り組んできた。これは,力覚を中心にした書字の巧緻な感覚提示であるが,その中心である力覚について力覚デバイスと,それに同期した視覚の提示を,学習者及び巧緻な書字提供者となる指導者の視点で見直し,ユーザーインターフェースの充実に努め改良を図った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究には,力覚とラバーハンド錯覚を中心に構成される,感覚提示装置の完成が欠かせない。 このため,まず感覚提示装置を完成させる。その後,被験者の協力を得ながら,上肢や手指のどこ(一カ所か複数箇所かを含む)に,どれだけの振動刺激(何Hz)を与えると効果的なのかを明らかにする。これを明らかにした後に,アルファベット書字指導を段階的にすすめる。まず,アルファベット書字の動作の巧緻性が暗黙知として,学習者に伝わるかを確認する。次に,感覚提示装置に基づいた指導によって,学習者のアルファベットの書字技能が向上するのかを明らかにする予定である。なお,アルファベット書字技能の向上に関する評価には,われわれが開発した定量的かつ客観的な評価ができる指標を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者にラバーハンド錯覚を引き起こす,振動刺激装置の設計を慎重に行った。つまり,振動チャンネル数の決定や,振動数,振動時間,各チャンネルからの振動発生を任意に決めるシステムをどのように実現させるのかなど,価格を含めハード面,ソフト面について総合的な検討を行った。その結果,具体的なシステムの発注を翌年度分として計上することとした。
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