研究課題/領域番号 |
21K18524
|
研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
橋本 宣慶 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (00433699)
|
研究分担者 |
安田 寿彦 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (60157998)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 障がい者支援 / バーチャルリアリティ / マンマシンインターフェース / 工作機械 / 加工実習 |
研究実績の概要 |
身体に障がいを持つ人でも,コンピュータ制御工作機械の操作を担うことで機械製造現場での活躍が可能である.大学の機械系学科を志望する身体に障がいを持つ学生にとって,必修の機械工作実習が単位修得の障壁となっている.そこで本研究では,健常者だけでなく身体に障がいを持つ人でも機械加工の作業ができ,健常者と同様に実習授業を体験できる仮想実習システムを開発する.これにより,身体的動作を伴う作業において障がいを持つ人と健常者はどこがどう異なるかと,それに対してハードウエアやソフトウエアにどの程度の支援を入れるのかを検討していく. 開発するシステムでは,身体に障がいを持つ人(肢体不自由における等級1級(全身まひ)まで)を対象にして,機械部品を加工する作業の実習授業を仮想的に体験できることを目標としている.研究代表者がこれまでに開発した健常者向けのVR(バーチャルリアリティ)実習システムを利用し,操作者の肢体不自由における等級に応じて支援を行う入出力のデバイスと支援機能を追加していく.そのシステムにおいて,健常者である被験者に実習授業とVR実習を実施する.その時の脳波の分布や視線動作の測定結果から,システムの現実感や障がいを持つ人に対する適合度,すなわち被験者が実習授業と同様に慎重な作業に緊張したり,被験者が実習において操作の実感が得られているのかを検討する. 本年度では,システムの入出力に可変性を持たせるための検討と,仮想環境(コンピュータシミュレーション)内の工作機械の操作を,様々な入出力方式に柔軟に対応できるソフトウエアに関する検討を行った.また,VR実習の実験における実験条件を決定する基礎データとして,切削加工における状況変化の感度や,操作を行った実感に関係する感覚呈示遅れが作業への影響について調査した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システムの入出力における可変性の検討に関して,既存のシステムの入力では専用に構築されたコントローラとタッチセンサ,出力では液晶モニタとヘッドマウントディスプレイ(HMD)による方法である.本研究のシステムでは,視線入力とジェスチャ入力に使用するセンサの選定を行った.視線入力では頭部装着型のものを使用するが液晶モニタ出力との組み合わせでは,頭の動きが誤入力の原因になるため,マーカによる頭部位置検出を組み合わせることで解決した.ジェスチャ入力では,操作者の負担が少ないことから骨格推定型のモーションキャプチャを使用することとした. 被験者による実習の実験において使用する脳波計を導入した.これは脳波入力も可能なので,システムの入力方法に使用できるのかを今後検討する. 実習作業において加工状況変化を観察させるため,機械システム工学科の学生に対して,実際の切削加工条件の変化を認識する感度を検討した.旋盤における切込みと送り速度を変化させ,映像や音によりどの程度認識できるかを実験的に得た.また,実際の旋盤作業の遠隔操作を模擬する装置により,機械システム工学科の学生に対して実験を行い,どの程度の視覚・聴覚の遅れが作業に影響するのかを調べた.
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に検討した入出力方法をシステムに導入する.視線入力やジェスチャ入力のように数種類の入力方法に対応するために個別に操作方法を設定するとシステムが大きく煩雑になることが懸念される.そこで基本的な動作(掴む,押す,回すなど)を入力し,それらを組み合わせて仮想の工作機械を操作できるシステムとする.また,実習中では様々な方向から切削の様子を観察するため,視点の移動も基本動作に含める. 上記のシステムを構築した後,機械加工実習を経験した機械工学系学生に対して被験者を募り,実際の実習との類似性や操作性に関する評価を行う.さらに研究協力者(障がいを持つ人のリハビリテーションを専門とする理学療法士)に,障がいを持つ人がシステムを使用した場合に関しても意見を求める.これらから明らかになった問題点は逐次改善していく. システムの最終評価(脳波を利用した操作感覚の評価)に関する準備を進める.システムを用いた仮想作業と比較するのは実際の作業であるが,健常者が被験者でなければ比較できない.障がいを持つ被験者には,工作機械の遠隔操作による作業を比較対象とする.そのため,すでに開発している工作機械の遠隔操作を模擬するシステムに対して改造を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
予算案の作成時に購入予定だった視線検出装置よりも安価なものが導入できたので,次年度使用額が生じた.その分を,すでに開発している工作機械の遠隔操作を模擬するシステムに対して,実際に遠隔操作できるように改造する費用に充てる.これにより,障がいを持つ被験者において,システムを用いた仮想作業と比較実験を可能にする.
|