研究課題/領域番号 |
21K18531
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
波多腰 克晃 日本体育大学, スポーツ文化学部, 教授 (20468797)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | ドイツ・ナチズム / みせる身体 / eスポーツ / VR / 仮想世界 / ヴァイマル期 / 大衆の心性 / ハンナ・アレント |
研究実績の概要 |
ドイツ・ナチズムイデオロギーは当時の青少年の身体を「みせる身体」として政治利用してきた。eスポーツにおいて偏った思想を背景とした新たなヒーローが生み出される可能性の抑止力として、本研究では、ドイツにおける当該時期の大衆の心性を焦点化し検討する。 現実の世界におけるスポーツ場面では、「個々人の経験」のみならず、他者と共感する「我々の経験」が如何なる意味をもつのか多方面から検討されている。現実から仮想現実へと視点を変えた時、他者と共感する「我々の経験」はどのように解釈しうるのだろうか。たとえば、『アニメの社会学』の中で足立は「空間を共有しない状況においても私たちは相互作用を織りなしている社会」を検討することの重要性を指摘する。これまでの社会のあり様は、ゲオルグ・ジンメルの社会学的考察を始祖として他者と対面的な相互作用を交わす場面が想定され、検討されてきた。しかし、SNSの普及やヴァーチャル世界における新たな経済活動などはむしろ、見知らぬ他者とのつながりを含む共同性が含まれている。 スポーツ場面におけるVRの活用においても、見知らぬ他者とのつながりを含む共同性の実現が容易に可能となるであろうし、同時にそのことは「空間を共有しない状況における相互作用を織りなす社会」が構成されることにもつながる。「見知らぬ他者とのつながりを含む共同性」は作られた世界(仮想現実)において偏った思想を背景とした新たなヒーローに陶酔する〈私たち〉を生み出し、新たな「我々の経験」が創り出される可能性がある。このことがプロパガンダとしての役割を果たし、ハンナ・アレントの言葉をもじれば、「悪の凡庸」を生み出しかねない。その抑止力となる研究が今後重要となる。 以上の検討を踏まえ、今後は「ヴァイマル期における大衆の心性」をキーワードとして検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度も新型コロナウイルス感染拡大に伴い、研究活動を自粛せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究活動が制限される中、できる範囲で活動をしてきた。その成果によって得られた知見をもとに、今後の研究を進めたいと考えている。研究初期の段階に予定していた文献収集の必要性に特に変更がないため、予定通り当初の研究を進めたい。また、新たな視点が加わったので、できる限り並行して検討を続ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでコロナ禍により、遂行できなかった資料集を中心に研究を進める予定である。それに伴い、旅費交通費、及び一部ドイツ語の翻訳等に充てる予定がある。
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