研究課題/領域番号 |
21K18535
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研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
梅澤 克之 湘南工科大学, 工学部, 教授 (20780282)
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研究分担者 |
中澤 真 会津大学短期大学部, 産業情報学科, 教授 (40288014)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | プログラミング言語 / ビジュアル型言語 / テキスト型言語 / 学習分析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ビジュアル型言語とテキスト型言語の学習の利点を有し,両者の差異を埋める教育コンテンツを検討・試作し,実証実験を通して,学習結果だけでなく学習中の学習状態を評価することである.これにより,その中間型言語の有効性を評価し,初等・中等プログラミング教育に役立つ教育コンテンツを完成させる.このように,本研究によりプログラミング学習に関して,ビジュアル型言語からテキスト型言語への移行の方法論を確立することができる.2021年度はビジュアル型言語とテキスト型言語の学習の利点を有し,両者の差異を埋める教育コンテンツ(中間型言語とよぶ)を検討・試作し,実証実験を通して評価を行った.ビジュアル型言語からテキスト型言語のプログラミング間の差異を埋める中間教育コンテンツの試作を行い,湘南工科大学付属高等学校の3年生に対して7回の授業を実施し,アンケートにより中間コンテンツの持つべき特徴を持っているかの確認を行った.本年度は,アンケートによる評価に加えて,提案する中間コンテンツでの学習を挟む方が,その後のテキスト型言語の理解度が上がり,確認テストの成績が統計的に有意に高くなることを実験および分析により確認した.これにより提案する中間コンテンツの学習効果を定量的に評価することができた.さらに本年度は,ビジュアル型言語とテキスト型言語の学習中の生体情報(脳波,心拍,表情)を計測することで,両言語の学習中の生体情報に差異があることを発見した.ただし本年度の成果としては差異の有無だけであり,その差異の理由やそれらに基づく適切な学習法の提案まではたどり着いていない.これらに関して,国内学会発表2件,国際学会発表3件を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,ビジュアル型言語とテキスト型言語の学習の利点を有し,両者の差異を埋める教育コンテンツ(中間型言語とよぶ)を検討・試作し,実証実験を通して,学習結果だけでなく学習中の学習状態を評価することである.これにより,その中間型言語の有効性を評価し,今後の初等・中等プログラミング教育に役立つ教育コンテンツ(中間型言語)を完成させる.具体的な研究の推進計画としては,以下の(a)~(c)を掲げている.(a)プログラミング間の差異を埋めるプログラミング学習ツールの開発:シンプル(テキスト型言語特有の追加知識不要),素早いフィードバック(実行結果がすぐわかる),文法エラーが起こりにくく,論理エラーの箇所がわかり易い,というような特徴を持つ中間型言語を試作する.(b)学習時の生体情報(脳波や視線)を取得する実証実験:上記で作成した中間型言語,およびビジュアル型言語,テキスト型言語のそれぞれを用いて,学習時に脳波や視線等を取得する実証実験を実施する.(c)各言語学習時の差異を分析・抽出し,学習プロセスの溝の明確化:上記の実験結果を用いて各言語の学習時の学習状態の差異を分析する.学習時の編集履歴と脳波を計測することによって,学習者がどのような課題でつまずいているのか,あるいは逆にどのようなときに学習意欲が高まっているのか等を明らかにした上で,学習者の編集プロセスとその際の脳波によって学習者を分類し,比較・分析を行っていく.実証実験と分析はそれぞれの結果を受けて,逐次的に改良しながらスパイラル的に実行する.昨年度は,研究の初年度にあたり,「中間型言語の検討・試作と予備実験」という目標を掲げて研究を推進した.本年度は2年目ということで,上述の(b)の両言語の学習時の生体情報(脳波や心拍,表情)を取得する実証実験とその分析を実施した.この目標に関しては概ね達成できたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,初年度に試作した,以下の特徴を持つ中間教育コンテンツを試作し,実験を行いアンケートにより持つべき特徴を有していることを確認した.今年度は,その中間コンテンツが教育効果を向上することを実験により検証した.具体的には,ビジュアル型言語での学習を行った後で,中間型学習コンテンツを用いた学習を行い,その後にテキスト型言語の学習を行う場合と,ビジュアル型言語での学習を行った後で,中間型学習コンテンツを用いた学習を行わずに,直接テキスト型言語の学習を行う場合で,テキスト型言語の理解度がどのように変化するか実験を通して検証した.さらに学習後の結果のみでの評価ではなく学習時の生体情報に基づく評価も行うことで,ビジュアル型言語学習時とテキスト型言語学習時の学習状態の差異を検証した.今年度検証できたのは,両言語を学習している際の生体情報が異なるということを検証できたことまでである.今後は,いままで発見できたことを国際学会で評価してもらうために査読付きの国際学会へ投稿するととともに,今まで行ってきた実験よりも課題の難易度や実験時間なども厳密に設定して,更なる実験を行い,両言語間の生体情報の違いを明らかにしていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会 IEEE International Conference on Engineering, Technology and Education (IEEE TALE 2022)への論文投稿を計画し投稿したが、査読の段階でリジェクトされてしまった.また,別の国際学会 The 18th ACM Conference on International Computing Education Research Conference (ACM ICER 2022)への論文投稿を計画し投稿したが、査読の段階でリジェクトされてしまった.このため当該助成金の一部に未使用額が生じてしまった.また、コロナ禍で当初想定していた脳波計や他の生体情報機器を装着しての実験などが実施できない状況が生じた.来年度は,計画的に国際学会などへの投稿および実証実験の実施を行って行く予定である.
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