• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

社会的孤立・隔離後の社会的絆の再構築

研究課題

研究課題/領域番号 21K18547
研究機関筑波大学

研究代表者

小川 園子  筑波大学, 人間系, 教授 (50396610)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2023-03-31
キーワード社会的接触経験 / オキシトシンとイソトシン / マウスとカクレクマノミ / 不安とストレス / 内側扁桃体
研究実績の概要

本研究では、社会的孤立・隔離の状態から、社会的関係性(絆)を再構築していく過程でのオキシトシンの役割の理解することを目指している。主に視床下部室傍核で産生されるオキシトシンは、内側扁桃体をはじめとする脳部位に運ばれてオキシトシン受容体に結合し、親和性行動、社会認知の促進および不安やストレス反応の低減に働くことによって、社会的絆の形成に中心的役割を果たしていることが報告されている。しかし、これまでの研究では、行動テストに先立つ個体の社会的経験についてはほとんど考慮されておらず、孤立・隔離後の社会的絆の再構築におけるその役割の理解には程遠いと言わざるを得ない。そこで、本研究では、社会的経験の多寡を実験的にコントロールできる行動テストパラダイムを新たに開発し、マウスとカクレクマノミの動物モデルに適用することとした。どちらの場合も、4匹の実験個体の各々の居住用となるケージまたは水槽4つを、個体間インターラクションの場となる中央区画に繋げた4+1ドミトリー型社会行動測定装置を用い、一定期間、隔離飼育をした後に、中央エリアで行う個体間行動にどの様な変化を見られるのかについて、詳細に観察・記録することを計画した。マウスについては、すでに稼働しているプロトタイプの装置の改良と増設を行なうとともに、今後の実験で使用することを予定しているオキシトシン受容体関連のトランスジェニックマウスラインの繁殖を行なった。一方、カクレクマノミ用については、新たに装置を開発する必要があるため、その設計とプロトタイプの作製を行ない有効性を検討した。以上により、マウスとカクレクマノミともに、実験個体を用いた行動解析に向けての準備をほぼ終了することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は、装置の開発、改良、作製に時間が予想以上に時間がかかったこと、実験用マウスの繁殖が計画通りに進まなかったことにより、実験個体を用いた解析に着手できなかったため、全体として、実験計画、実施にやや遅れがあったと自己評価した。

今後の研究の推進方策

2021年度に作製した4+1ドミトリー型社会行動測定装置を用い、マウス、カクレクマノミで各々、行動実験を実施する。マウスでは、オキシトシン受容体Cre(OTR-Cre)の雌雄の成体マウスを、同性の4匹のマウスを一組として、4+1ドミトリー型行動測定装置内の各々のホームケージ内に移して隔離飼育を開始する。5週間の隔離期間終了後、中央エリアに一匹ずつ別々に移動させ、(1)ソーシャルインターラクションテスト:中央エリアの中心に下部1/3に直径7mm透明アクリル製の筒に同性の刺激個体を入れて提示し、社会的探索行動と社会的不安行動を記録する、(2)社会的選好性テスト:中央エリアの対角線上においた筒に、様々な組み合わせで刺激マウスを提示して、選好性の測定を測定する、および(3)ファイバーフォトメトリーによるオキシトシン作用ニューロンの神経活動のイメージング記録を行う。中央エリアでのマウスの行動の動画データを元に、DeepLabCutを使用した機械学習解析を行う。実験中にマウスがどの場所により滞在したのか、どのタイミングで筒内に提示された刺激個体に近づき、神経活動に変化が見られたのかを解析する。カクレクマノミを用いた実験では、最小と最大の体重差が0.6gに収まる4匹のカクレクマノミを4+1ドミトリー型行動測定装置内の居住水槽で1匹ずつ飼育する。2週間後から、2匹ずつの組み合わせ6通り全てについて、中央水槽内でペアあたり20分間の出合わせテストを、毎日繰り返して行い、僅かな体重差に基づく社会構造の構築の過程を観察する。

次年度使用額が生じた理由

2021年度には、実験装置の改良に手間取り実験個体マウスを用いた行動解析実験に着手することができなかったため、未使用の助成金が発生した。また、カクレクマノミを用いた実験についても、装置の開発が遅れたため、2021年度には、本格稼働に向けての装置の増設、クマノミの購入、維持、及び行動及び神経組織実験の実施に必要な解析機器及び試薬の購入などに充てることを予定していた助成金を使用しなかった。2022年度には、2021年度に未使用のままであったものと、2022年度に請求する助成金を合わせて、物品の購入、実験実施補助者の雇用、及び研究成果発表に係る費用として使用することを計画している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [学会発表] Role of estrogen receptor beta-expressing neurons in the neural networks of social behaviour.2022

    • 著者名/発表者名
      Ogawa, S., Takenawa, S., Murakawa, T., Hasunuma, K., Moraes, L., Sagoshi, S., Nakata, M., and Sano, K.
    • 学会等名
      The 11th International Meeting Steroids and Nervous System
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Life-long hormonal action on social brain2021

    • 著者名/発表者名
      Ogawa, S.
    • 学会等名
      Tsukuba Conference on "Social Brain 2.0: Social Neuroscience in Post-Pandemic Era"
    • 国際学会 / 招待講演

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi