研究課題/領域番号 |
21K18553
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三輪 晃司 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (40806147)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 単語認知 / 漢字 / 個人差 / 手書き / 一般化加法モデル |
研究実績の概要 |
本研究では、漢字認知時の全体的処理と分析的処理のバランスに関して、個人差がどれだけ影響するのか確認することを目的としている。とりわけ、近年明らかな手書き習慣の減退が漢字認知に及ぼす影響が研究の焦点となっている。漢字と非漢字を区別する漢字認知実験(事前テスト)の後、書字行動(漢字の書取り、もしくは漢字のタイピング)を行い、再び漢字認知実験(事後テスト)をすることで、異なる書字行動を求められた2つのグループの間に事後テストでの漢字認知に違いが出るのかを検証する。加えて、参加者の日常的な書字行動(手書きとタイピングの割合)が漢字認知(事前テストおよび事後テスト)にどのように影響するのか検証する。 一年目は実験計画の詳細を固めることを行なった。具体的には手書き習慣をどのように測定するのかという問いの解決と実験用刺激の選択に多くの時間を割いた。手書き習慣に関する12の質問(例:次のことにどの程度同意しますか。→ 講義中、メモや課題のために手書きする。)に対して7段階のスケール(1:全く当てはまらない、7:非常に当てはまる)を用いて答えてもらい、日常生活の色々な局面での手書き習慣を考慮した手書きとタイピングの習慣に関するスケールを作成することにした。大学生を対象にするということで、講義内と講義外の手書きとタイピング行動を問う設問を設ける等の工夫をした。アンケートを作成した後、パイロットテストを行い、その結果、アンケートに修正を加えた(例:単純に手書き行動を問うだけでは数式の手書き行動も含むので、日本語に限定する文言にする等)。実験用刺激に関しては、先行研究を再読し、熟慮の結果、今回は左右漢字(例:姫、海)のみを使用することに決め、600漢字とその語彙特性を準備した。非漢字は左右漢字の構成要素をランダムに結合し、さらに1画を加える/減らすことで作成することに決めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一年目での実験開始を当初計画していたものの、国際誌出版を見据えたよりクオリティーの高い研究にするために実験計画の詳細(個人差の測定方法と実験用単語刺激の選定)の決定に予想以上に時間を要した。しかし、それが故に、実験準備に関しては、おおむね満足できる結果となった。コロナ感染症の流行によるラボ内での複数の実験に関わる問題に対しての対処にも時間を要し、作業が進みにくい時期があった。さらに、研究代表者の精神疾患の治療が令和4年1月に終了するまでの間は作業のペースが落ちることがあった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度内に実験を開始し、データを取り終えることを目指す。左右漢字のみを使用すると決定したため、現在は実験に使用する600の漢字と600の非漢字を実験用ソフトPsychoPyで提示できる形で外字エディタで作成中である。実験の準備が出来次第、80名ほどの大学生からデータを採取することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
一年目での実験開始を当初計画していたものの、よりクオリティーの高い研究にするために実験計画の詳細(個人差の測定方法と実験用単語刺激の選定)の再考と決定に時間を要した。2年目は実験データの採取(参加者への参加謝礼と実験アシスタントの雇用)のために経費を使用する。
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