研究実績の概要 |
ウィリアムズ症候群(WS)と自閉スペクトラム症(ASD)児者を対象とした,社会的認知特性と感覚特性の比較研究を進めた.両群における社会的認知特性を明らかにするため,SRS-2対人応答性尺度を用いた.結果,WSとASDでは,社会的動機づけはASDの重症度がWSと比較して有意に高かった一方,興味の極限と反復行動,社会的認知,社会的コミュニケーションにおいては,両群ともに有意差はみられなかった.また,発達軌跡を検討した結果,SRS-2合計得点はASDにおいては年齢とともに変化がみられなかった一方,WSでは,合計得点が発達とともに減少する傾向を見出した(Hirai et al., 2023).さらに両群における感覚特性についてもSP感覚プロファイル質問紙を用い評定した.低登録,感覚過敏,感覚探求,感覚回避の4つの領域における評価を行ったところ,両群ともに,非定型な感覚特性を持つ方が多く,特にWSの方では,10%-20%の方のみが定型発達児と同等のスコアであるが,残りの(80%-90%)方々は,感覚特性に何らかの問題を抱える可能性が明らかとなった.発達奇跡では,WSの方々は感覚探求については発達とともに減少する傾向がみられたものの,それ以外については発達による変化がみられなかった(Hirai et al., 2024).特にこれら感覚特性と他者視点取得(社会的認知)の関係についても両群で検討を進めている.また,感覚特性がどのような社会的認知特性・認知特性に関連するかについても検討した.特に,自閉傾向の高さが不確実さ不耐性を媒介して二分法的思考に至るかについて明らかにした(Suzuki & Hirai, 2023).そのうえで,特異な感覚特性が不確実さ不耐性を媒介して二分法的思考,不安に至ることを更に見出している(Shi & Hirai, under review).
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