動物を用いた共感性研究において、他個体が感じる苦痛に対して忌避を示すという、共感的悲しみに関する報告が多くなされてきた。本研究は、独自の他者行動観察課題と、ドーパミン計測を指標としたマウスの情動変化の評価を組み合わせることにより、他個体が直接的に苦痛を感じている時だけでなく、その出来事を予測する別の刺激に対しても、観察側のマウスが負の情動感染を示すことを明らかにすることができた。本研究の結果は、他人の気持ちに対する想像性の欠如が一因となる誹謗中傷やいじめといった社会問題の解決や、共感性の変化と関連した精神疾患の治療に貢献しうる前臨床研究として重要な意義がある。
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