研究課題/領域番号 |
21K18560
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
太田 真理 九州大学, 人文科学研究院, 講師 (20750045)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 言語 / 脳波 / ニューロフィードバック / 経頭蓋電気刺激 / 外国語学習 |
研究実績の概要 |
今年度は、①外国語学習者に対する経頭蓋電気刺激実験、②外国語学習者に対する脳波・経頭蓋電気刺激同時計測実験、③母語話者に対する経頭蓋電気刺激実験、④ニューロフィードバックに用いる脳波成分・解析法の検討を実施した。 ①日本語母語話者30名に対して、学習歴のない外国語であるスペイン語の動詞活用を学習させる際に、高密度経頭蓋直流電気刺激法により左下前頭回を含む言語野の脳活動を亢進させた結果、コントロール群に比べて有意に課題の正答率が上昇し、反応時間が減少することが明らかとなった。 ②日本語母語話者25名に対して、スペイン語の動詞活用を学習する際に経頭蓋直流電気刺激法により左下前頭回を含む言語野の脳活動を亢進させると同時に脳波を計測する実験も行った。現在取得済みの脳波データの解析を進めている。 ③日本語母語話者50名に対して、日本語の受動文やかき混ぜ語順文(目的語・主語・動詞語順)を理解する際の左下前頭回の脳活動を高密度経頭蓋直流電気刺激法により変化させた。陽極刺激により脳活動を亢進させた場合と、陰極刺激により脳活動を抑制した場合では、文理解課題の反応時間に異なる変化が生じることを明らかにした。 ④ニューロフィードバックに用いる脳活動の指標を検討するため、脳活動のゆらぎを定量化する指標を提案し、以前の研究で取得したfMRI、脳磁図、脳波などの各種脳機能計測データに対して適用した。認知処理と連動して脳活動のゆらぎが変化するか現在検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
経頭蓋電気刺激法を用いて、外国語学習時に行動や脳活動が変化するか検討する実験を実施した。すでに行動データについては解析が完了し、日本神経科学学会での口頭発表に採択されており、現在論文投稿の準備を進めている。脳波データについては現在解析を進めている。また、ニューロフィードバックの指標に、従来から利用されてきた時間周波数成分や事象関連電位に加え、脳活動のゆらぎを用いる可能性を検討している。現在、脳波や脳磁図、fMRIを含む脳活動データに対して適用した際の推定値が認知機能を反映するのか検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ニューロフィードバックと経頭蓋電気刺激法を用いて、脳活動の変化が外国語学習に与える影響について検討を進めていく。今後は脳波を用いたニューロフィードバック実験と、従来の学習法による行動実験を中心に進めていく。ニューロフィードバック実験では、時間周波数成分や事象関連電位、脳活動のゆらぎに基づいて脳波を分類する分類器を作成し、週1回1時間のNFBを6回(1.5ヶ月)行うことを予定している。行動実験も脳波実験と同様に、週1回1時間の学習を6回行う予定である。さらに、経頭蓋電気刺激実験の結果から、未学習の外国語では先行研究で報告されたよりも大きな学習効果が観察されることが示唆されたため、英語に加えてスペイン語などの言語も対象にすることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費、人件費・謝金、その他については、学内研究費並びに講座費から執行したため、当初の予定よりも大幅に支出額が少なくなった。また、新型コロナ感染症への対策として、新たにニューロフィードバック実験を行う代わりに、取得済みのデータの解析を中心に進めたことも、物品費、人件費・謝金の減額に影響した。参加を予定していた学会が全てオンラインでの開催となったため、旅費についても執行する必要がなくなった。 来年度はニューロフィードバック実験を中心に進めるため、被験者への謝金や実験補助者への謝金として執行予定である。また、学会の現地開催が予定されているため、学会発表に伴う旅費も当初の計画通り執行する予定である。
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