研究課題
2022年度は、①外国語学習者に対する脳波・経頭蓋電気刺激同時計測実験、②ニューロフィードバックに用いる脳波成分・解析法の検討、③母語話者に対する脳磁図実験を実施した。①日本語母語話者50名に対して、スペイン語の動詞活用を学習する際に、経頭蓋直流電気刺激法により左下前頭回を含む言語野の脳活動を亢進させながら脳波を計測する実験を行った。刺激前後で事象関連電位を比較し、文法判断課題の成績と関係する脳活動を検討した。その結果、文法処理との関連が報告されている事象関連電位P600の振幅が減衰することが明らかとなった。前年度に実施した脳波実験から、母語話者では学習者に比べてP600の振幅が減衰することが明らかとなっており、刺激後に観察されたP600の減衰から、より効率的な文法処理が可能になったことが示唆された。②ニューロフィードバックに用いる脳活動の指標を検討するため、脳活動のゆらぎを定量化する指標を提案し、脳磁図、脳波などの各種脳機能計測データに対して適用した。認知処理と連動して脳活動のゆらぎが変化するか引き続き検討を進めている。③日本語母語話者40名に対して、日本語のかき混ぜ語順文(目的語・主語・動詞語順)を理解する際の左下前頭回の脳活動を脳磁図により測定した。かき混ぜ語順文では、基本語順文(主語・目的語・動詞語順)に比べて脳活動が上昇することが知られているが、文脈情報を与えると処理負荷が軽減することが報告されている。現在、文脈情報と語順の変化が脳活動に与える影響について分析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
経頭蓋電気刺激実験と脳波実験の結果を、日本神経科学学会、日本言語学会などの学会で発表し、論文として投稿中である(プレプリントサーバーにて公開済み)。学習者に対する経頭蓋電気刺激実験や脳波実験では、外国語学習に左下前頭回が果たす役割を明らかにできたため、当初の予定以上に進展したと考えている。一方で、ニューロフィードバックに用いる脳活動の指標については、さまざまな指標を探索的に検討する必要があり、当初の計画よりも遅れている。したがって、研究全体としては概ね順調に進展していると考えている。
現在まで、研究全体としては概ね順調に進展しているが、ニューロフィードバックに用いる指標については難航している。今後はニューロフィードバックに用いる指標の最適化に注力し、脳波実験を進めるとともに、研究成果を論文として取りまとめることにも集中する。
物品費、人件費・謝金、その他については、学内研究費から執行したため、当初の予定よりも大幅に支出額が少なくなった。また、新型コロナ感染症への対策として、新たにニューロフィードバック実験を行う代わりに、取得済みのデータの解析を中心に進めたことも、物品費、人件費・謝金の減額に影響した。参加を予定していた学会がオンライン開催となったため、旅費についても執行する必要がなくなった。来年度はニューロフィードバック実験を中心に進めるため、被験者への謝金や実験補助者への謝金として執行予定である。また、学会の現地開催が予定されているため、学会発表に伴う旅費も当初の計画通り執行する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 8件、 招待講演 9件) 備考 (2件)
音韻研究
巻: 26 ページ: 43-50
Issues in Japanese Psycholinguistics: From Comparative Perspectives
巻: - ページ: -
bioRxiv
10.1101/2022.12.17.520859
10.1101/2022.12.19.520902
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