研究課題/領域番号 |
21K18561
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕之 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (40243977)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 放射パタン / 集中線 / 錯視 / 線遠近法 |
研究実績の概要 |
放射パタンが一般に使用されている代表例として、日本の漫画における集中線を調査した。日本の代表的な漫画雑誌10誌から集中線を含む1121コマを収集し、その効果を検討し、遠近感、感情の強調、注意喚起、動きの表現、その他・複合効果に分類し、集中線の種類についても10種類に分類した。それらの集中線は組み合わせる対象に応じて解釈が変わることを実験的に確認し、放射パタンの多義的な特性が漫画にも現れていることを確認した。また、基盤研究(A)21H04424との連携により、2つの錯視を調べた。ひとつは、サンバースト錯視(Sunburst illusion)と名づけた新しい放射パタンによる錯視である。この錯視図形は、細い32本の扇形による白黒50%の放射パタンで、目がスムースに動いたときに、パタンの中央部分から明るく輝く領域が広がる錯視を生み出した。サッケードによっては、この錯視は起こらず、扇形と背景の輝度コントラストが高いとき、目が動く速度が速いときに強い錯視を起こすことがわかった。もうひとつは、reverspectiveという語で知られている反転遠近法である。この中で、放射パタンをなす線遠近法は、それ単独で両眼立体視による奥行き手がかりを反転させるほどの奥行き手がかりとなることが実験的に示された。令和4年度は、放射パタンあるいは放射パタンを含む絵画や漫画の提示において、放射線パタンの役割によって眼球運動にどのような影響が生じるかを実験的に調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射パタンの多彩な効果を実験的に確認し、新しい錯視効果も発見することができた。おおむね順調に進展していると言ってよいと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
特に大きな変更点はないが、より論文化に向けた実験を強化していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの蔓延により、学会や研究会等がオンライン化され、出張がなくなったこと、および掲載が決定している論文の出版費の支払いが2022年度になることによる。使用計画については、論文の出版費用にあてる他、学会旅費、研究協力者の雇用費、被験者への謝礼などの使用を増やす予定である。
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