新しい環境で試行錯誤をし、新たな記憶を形成するというプロセスは、動物にとって非常に重要な機能である。しかし、学習中、まさに動物の行動が変化する瞬間に神経活動のダイナミクスがどのように変化するのかは、まだ十分に明らかでない。本研究の目的は、哺乳類の生体脳から長期的に記録を取り、そのダイナミクスを長期間にわたって推定し、記憶が形成され、固定化するリアルタイムな過程を単一細胞解像度の神経活動ダイナミクスとして捉えることである。 まず、ニューロピクセル電極を慢性記録で用いるためのソケット(神戸大学大学院・医学研究科・薬理学分野古屋敷智之先生らとの共同開発)を試用して改良した。それに加えて、急性実験も行っている。新規環境の導入には仮想現実環境(VR)を用いる。VRを用いた行動課題について、VR装置を導入した。また、頭部固定用の治具をVR用に改良した。さらに課題の設計を行い、実際に動物を載せる訓練を行った。 また、集団的神経活動のダイナミクスをとらえる(モデル化する)方法としてはリカレントネットワークを使用する。記録済みの急性実験のデータを用いて、オートエンコーダーとしての性能を評価した。数日間のダイナミクスを継続して記録する方法として、急性実験を数日間行った実験データを用いてリカレントネットワークによるモデル化を用いる。また、同じ日のデータを2分割したデータから神経多様体を抽出し、その相違について検討した。
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