研究課題/領域番号 |
21K18574
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷部 好子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (30582829)
|
研究分担者 |
山田 幸恵 東海大学, 文化社会学部, 教授 (30399480)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
キーワード | レジリエンス / 時間知覚 / 時間的展望 / 東日本大震災 / 発達 / サークル・テスト / 時間割引 |
研究実績の概要 |
大災害や戦乱、疫病で社会が混乱すると、過去に生じなかったことが現在に生じ、現在に生じたことが未来に生じることを期待できない状況が続く。本研究は、過去・現在・未来を順接的にとらえられないような不安定な環境を発達段階で経験した群において時間枠組の形成を調査し、その形成の個人差を明らかにする。 研究実施計画で挙げたとおり、本研究では二つの作業仮説「不安定な環境は過去から未来への接続度合いを弱める」および「不安定な環境は未来についての想像による行動選択への影響を弱める」を掲げ、この検証のため量的な面を明らかにする認知課題と質的な面を明らかにする面接・質問紙調査を実施する。具体的には、ひとつめの作業仮説を検証するために1.過去から未来への認知的つながり度合を測定するタスク、2.時間的展望課題、3.質問紙および面接調査を実施する。ふたつめの仮説を検証するためには、1.想像課題を取り入れた時間割引率課題、2.時間的展望課題、4.質問紙および面接調査を実施する。これら複数の課題から得られたデータを組み合わせることで、時間枠組みの形成の個人差を明らかにする。 対象とするのは東日本大震災を経験した群および経験しなかった群で、令和4年度までに大学生での調査を、同5年度までにそれより若い層での調査を、それぞれ実施することを予定している。 7月から開始した令和3年度には倫理申請・眼球運動測定装置や市販質問紙の調達・質問紙の質問項目決定・認知課題のプログラム(時間展望課題・時間割引率課題など)作成を実施した。 また、当初は面接調査を予定していなかったが、参加者へのケアや質的データの重要性を重く考慮し、震災を経た群については質問紙調査のみでなく公認心理師の山田による半構造化面接を実施することとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間の始まった7月から初年度末は新型コロナウイルス感染症の第5波・第6波に重なり、まん延防止等重点措置等のため、当初想定していた岩手県での調査はおろか、本研究を推進する研究者同士の対面での打ち合わせすら出来ない状況が続いた。 また、本研究は実験参加者のトラウマに触れるおそれのある内容のため、通常の倫理申請に比べより詳細な説明が求められ、倫理委員会による承認に半年近くを要した。 しかしながら待機時間を利用して今後の期間に必要になる実験・調査に必要となるコンピュータプログラム等の準備を進めたため、十分挽回可能であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
実験に使用する時間展望課題(サークルテスト)について、当初は難民等を対象とした調査で歴史的に用いられてきたものを用いる予定であった。しかしながら紙で行われた調査をコンピュータ化するにあたり、紙では測定不可能だった側面を検証できることとその可能性に思い当たった。そこでコンピュータ化されたタスクと旧来型タスクの違いを検証するサブプロジェクトを今年度初旬に実施し、論文にまとめることとする。 上記の検証と同時に統制群(震災等を経験していない群)でのデータを取得し、令和4年度後半には現地を訪問して測定・調査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延防止措置のため対面の打合せや出張実験ができなかったため、出張費を使用しなかった。
|