研究課題/領域番号 |
21K18583
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長澤 壯之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (70202223)
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研究分担者 |
下川 航也 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (60312633)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 結び目のエネルギー / メビウス・エネルギー / 絡み目のエネルギー / 分解エネルギー / 調和写像 |
研究実績の概要 |
結び目のエネルギーの代表であるメビウス・エネルギーの諸性質を理解するために、結び目だけでなく絡み目のエネルギー全般を解析し、メビウス・エネルギーの特殊性を浮き挙がらせる方法を用いた。 結び目に対するメビウス・エネルギーのメビウス不変分解が絡み目に対するメビウス・エネルギーについても成り立つ事が分かった。分解エネルギーについては、同一のものにかからわず、様々な表現が知られている。ここでは、ガウス写像を用いた表現を得た。絡み目の場合、ガウス写像の写像度が絡み数という位相不変量となる。このように位相を表現する量を用いて分解エネルギーが表現できたことは、位相を固定したときの変分問題に応用できるのではと考えられる。 元々第一分解エネルギーは分数冪調和写像のエネルギーとの類似が指摘されていたが、第二分解エネルギーはガウス写像を用いる事で波動写像(調和写像の一種)と緊密に関連する事が明らかとなった。これは、当初は想定していなかった発見である。調和写像については従前より膨大な研究成果があり、結び目や絡み目のメビウス・エネルギーの新たな知見が得られることは期待できる。 更に、メビウス・エネルギーのメビウス不変分解は、ユークリッド空間内の結び目や絡み目に対して成立するが、これはユークリッド空間で中線定理が成り立つことに由来することも明らかになった。これは、前ヒルベルト空間に値をもつ結び目や絡み目に対する場合でも類似の結果を生むことを示唆する。これも研究当初では想定しなかった発見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第二分解エネルギーが波動写像に関連することは当初は想定されていなかった発見である。この結果は、解析幾何学の分野において強い関心を持たれ、日本数学会特別講演をはじめとする複数の招待講演を依頼されるなど、当初の計画以上の十分な成果と考えられる。また、メビウス不変分解が中線定理から解釈できることも新たな発見である。今後の研究の推進方策でも述べるが、これは発展方程式の周期解の解析に寄与できる可能性を見出せるものである。なお、令和4年度内に著書1編、査読付き論文1篇が出版された他、現在関連する複数の論文を作成中である。課題に関する成果発表は8件である。
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今後の研究の推進方策 |
メビウス・エネルギーのメビウス不変分解は、ユークリッド空間内の結び目や絡み目に対して成立する事が明らかになったが、これはユークリッド空間で中線定理が成り立つことに由来することも明らかになった。これは、前ヒルベルト空間内の結び目や絡み目においてもエネルギー分解が可能であることを示唆する。もともと結び目や絡み目は位相幾何学の対象であるので、その観点からはこのような一般化は意味は薄い。しかし、発展方程式の周期解は、バナッハ空間内の結び目や絡み目となることを考えると、この分野への寄与する可能性がある。内積を持たない空間内の結び目や絡み目に対するメビウス・エネルギーについては、同様の結果が成り立たないかを考えたい。但し、このような空間は「回転」という概念がないため、これまでとは異なる議論が必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在論文3篇を作成中である。そのための英文校閲のための経費が必要となるが、当初の見込みより経費が掛かる見込みのため、次年度に経費を回すことにした。
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