研究実績の概要 |
本研究の目的は, ネットワーク上の量子的粒子の運動を, グラフ上で非線形シュレディンガー方程式の適切性(解の存在, 一意性, 初期値連続依存性)や解の長時間挙動を調べることで解明することである. 本年度は昨年度に引き続き, グラフ上の非線形シュレディンガー方程式に対し解の長時間挙動について考察した. グラフが星形の場合には直線上のシュレディンガー方程式に対する手法を援用することできるため, 解の長時間挙動に関する結果は多くあるが, グラフが星形でない場合は同様の手法を用いることは一般に困難である. そこで本研究ではグラフが星形でない場合の解析の1つのステップとして, グラフがオタマジャクシ型と呼ばれる場合にそのグラフ上の線形および非線形シュレディンガー方程式の解の長時間挙動について考察した. また, 関連する問題として, 空間1次元において3次の非線形項をもつ非線形シュレディンガー連立系(システム)の解の長時間挙動について考察した. 空間1次元において3次の非線形項はちょうど長距離型と短距離型散乱理論の境目に相当し, 解の長時間挙動を調べることは容易でない. これまでの研究では, 方程式のハミルトン構造に着目することでスカラーの場合に現れなかった解挙動をもつシステムの例を見つけてきたが, 本年度はハミルトン構造によらない別のアプローチにより, これまでとは異なる解挙動をもつシステムの例を見つけた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グラフの特別な場合と見なせる空間1次元において, 3次の非線形項をもつ非線形シュレディンガー連立系の解の長時間挙動についてはいくつか進展があったものの, 一般のグラフ上の非線形シュレディンガー方程式に対しては, 対応する線形シュレディンガー作用素のスペクトルの構造が複雑で, 解の情報を引き出すのに当初の計画より時間がかかっている.
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今後の研究の推進方策 |
グラフ上の非線形シュレディンガー方程式の解の長時間挙動について, スペクトル理論や調和解析の理論を駆使することで本問題にアプローチにする. また, 本研究を推進するため, 偏微分方程式やグラフ理論, 調和解析の専門家を招聘し研究集会を開催する.
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次年度使用額が生じた理由 |
グラフ上の非線形シュレディンガー方程式に対しては, 対応する線形シュレディンガー作用素のスペクトルの構造が複雑で, 解の情報を引き出すのに当初の計画よりも時間がかかっており, 次年度も引き続きこの問題について考察する必要が生じた. 次年度は, 引き続き本研究課題に関連する研究集会に参加するとともに, 偏微分方程式やグラフ理論, 調和解析の専門家を招聘し研究集会を開催する.
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